結果
残り4分45秒。
時間は割いてられない。
一分一秒を大切に攻めなければならない。
そう、考えながらフィールドを眺めていたとき…。
『…あ!!』
私の視界に飛び込んできたのは、フィールドに入ろうとしている桜庭春人の姿だった。
『危なッ!!』
どがんっ!!!
案の定、ボールを持って走っていたアイシールドと衝突。
見たところ鎖骨を痛めたように見える。
でも、今のはアイシールドのせいではない。
試合中、しかもプレイ中にフィールドに入るほうが悪いのだ。
……此処の観客の大半のミーハーどもはわからないかもしれないが。
それにしても五月蝿い。マナーがなっていない。
プロのアメフトの試合でブーイングはよくあることだ。それは味方にも、もちろん敵にも。しかしそれは悪意のあるものではなく、。愛あるものだ
みんな純粋にアメフトが好きで。
選手が好きで、みんなが好きで。
それがアメフトなのに……。
「最悪ー!!」
「桜庭くんになにすんのよ!!」
『黙れよ』
ビクッ!!
「な、なによ!!」
「うるさいわね!!」
『五月蠅いのはお前らだ。ここは競技場だ。観客にも観客のマナーってのがあるんだよ。調子こいてるとお前ら全員…ここから引きづり出すぞ?あぁ!?」
思わず本音が漏れてしまった。会場がいやに静まり返った。
「ケケケ、やるな、糞碧眼」
『…いや、本気でムカついたんですよ。あんな奴らがこの神聖な競技場に足を踏み入れてるって考えただけで』
「…そうか」
そして……
『…やったよ…あいつ。進…抜いちゃったよ…』
最高速度、40ヤード、4秒2の世界。
光速の世界。
ピーーーー!
「タッチダウン!!」
しかし、試合は68対12という結果で終わった。
それでも今回アイシールドが、セナが得たものは大きかっただろう。
『お疲れ、アイシールド君』
「あ、お疲れ」
『どう?アメフト、楽しい?』
「え?え…と…痛いかな」
『はは!そりゃそうだね。うん、そうだ』
「?」
『にしてもすごいな…4秒2か…』
4秒2…
私の知る限りそのスピードで走れるのはもう1人だけ知ってる。
元気にしているだろうか。
「おい」
『あ、ヒル魔さん。お疲れ様です』
「説明してもらおうか?」
『………』
やけに真剣な表情のヒル魔さん。ギラついた双眸は逃がさないとでも言うように私のことを射抜いている。
でも、まだ、
このことを誰かに話すわけにはいかない。
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