トウメイナセカイ | ナノ

戸惑い



次の対戦相手は強豪、王城ホワイトナイツ。

この部活に入部してから約2週間の私が言えたことではないが、王城ホワイトナイツに泥門デヒルバッツは勝てない。

ま、あくまで実際問題、数字上の話だが。

スポーツは試合開始から試合終了までの間、何が起きるか分からない。


だからこそ、面白い。


だから、泥門だって、勝てないわけじゃない。
私は、そう思う。


「おう、糞碧眼」
『ヒル魔さん。おはようございます』
「おう、データ出来てるか?」
『もちろんですよ。自信作です』
「ケケケ、そうか。楽しみだ」
『!?』


私は胸に痛みを感じ慌てて両手で胸を押さえた。


「……?糞碧眼、どうした?」
『いえ……なんでも』
「顔色わりーぞ」
『少し、寝不足なだけです。お気になさらず』
「そうか」
『それより早く部室に行きましょう。きっとみんな待ってますよ』
「あぁ」


さっきのは一体なんだったんだ。
ただ私は楽しそうに笑うヒル魔さんの顔を見ただけなのに。
私は本当に、どうしたっていうんだ。


私とヒル魔さんはそのまま歩を進め、部室へと向かった。部室へと近づくにつれ聞こえてくる話し声。もう部室には誰か来ているのだろう。
まぁ、大方、私たち以外は来ているのだろうが。……あの姉崎先輩もいるだろう。

私は部室の扉に手をかけ開けようとしたが、


『う……』


私は思わず、少し開いていた扉を閉め後ずさった。


「あ?どうした糞碧眼」
『なんであんなに甘いものが机の上に』
「あ?…あぁ、糞デブだろ。どーせ。……お前、甘いものだめなのか?」
『……食べれないことはないです。好まないだけで。ただ、机一面にケーキ類が乗っているとなると話は別です。…あぁ…生クリームの香りが…』
「…ケケケ、じゃあテメーと俺は気が合いそうだな」
『…え?』


ケケケと笑ったヒル魔さんはそのまま扉を蹴り開けて部室へと入っていった。


「おう、揃ってんな」


ズガッシャンッ!!!

ヒル魔さんは部室に入るなり、大量にスイーツの乗った机を足蹴にした。どうやら机はリバーシブルになっているらしい。ひっくり返った机はアメフトのフィールドを模様したものになっている。


「ホワイトナイツ戦の説明すんぞ!!」
「ケーキどけてからだっていいでしょ!!どうしてそう身勝手な…!」
「当然の抗議が新鮮に見えるね…」
「もう慣れちゃってる自分が恐ろしい…」
『誰も抗議しようだなんて考えませんからね』


姉崎先輩。なんとなくわかってきた。
伊達に風紀委員はやってきてないってわけか。正義感に満ち溢れている、とでも言うべきか。

気がつけば喧嘩をしていた二人はアメフトに関するクイズバトルを始めたようで、白熱していた。方やあのノリについていけないセナと栗田さんは二人とは別にアメフトのルール講座を開いていた。

私は栗田さんに手伝いをしながらバチバチと火花を散らす二人の会話に耳を傾けた。

第一問は10ヤードをメートル換算にするといくらになるかという問題のようだ。


『(……9.1440183m…)』
「……9.1440183m」


少しの思案ののち、ぴったりと答えた姉崎先輩。
イライラしているのかヒル魔さんの額に血管が浮きでていた。


「問2!!攻守交代するケースを全部言え!」
『(4回の攻撃で10ヤード進めなかったとき、点が入った後、キックをキャッチしたとき、キックのボールが外に出たとき、前半終了時、守備がボールを奪ったとき、キックが落ちて止まっとき)』
「4回の攻撃で10ヤード進めなかったとき、点が入った後、キックをキャッチしたとき、キックのボールが外に出たとき、前半終了時、守備がボールを奪ったとき、キックが落ちて止まっとき!!!」


ここまで覚えているとは、なかなかすごいと私は純粋に思った。


「ラスト一問ね…!」
「おい筋トレ行くぞてめーら」
「ちょっと!!」


ヒル魔さんは先程とは打って変わっていた。逃げたのか、どうなのか。


「あの、ちょっと」
『なんですか?姉崎先輩』


私もヒル魔さんにならって部室を出ようとした矢先、声をかけてきたのは姉崎先輩だった。


「あなたはなんなの?前から気になっていたんだけど」
『…ヒル魔さんは何も?』
「えぇ」
『…私は1年2組の碧路悠里です。アメフト部での肩書は一応マネージャーとなっていますが、主務業、マネージャー業、トレーナー業なんでもやります。これから、よろしくおねがいします』
「…そんなひとがいたなんてしらなかったわ。よろしくね?」
『はい。じゃあいきましょう』
「えぇ」




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