遅刻のヒーロー
試合は進み、残り時間は20秒。
今、攻撃しているのは恋ヶ浜キューピッド。
「ふんぬらばっ!!!」
「ヒッ!」
『……あ』
栗田さんのタックルで攻撃を止めたものの、止めた位置はゴールまで残り20ヤード程のところ。
相手からしてみればキックで得点が可能な範囲内だろう。
入れられてしまえば、絶体絶命。
「絶対キック止めなきゃー!」
「わかってんだよ、んなこた!こんなかで一番速いのは陸上部石丸テメーだ!栗田が真ん中の壁こじ開けっから、なんとかキックされる前に走り込め。ボールに触れなくても良い、とにかくプレッシャーかけろ!」
「OK」
結局、キックを止めに行った石丸さんが何故かキック手前で転び、相手のキックは成功。現在、3‐0で恋ヶ浜キューピッドが先制。
どうする?
「い、石丸くん!」
「ヤバイ、右足ひねった!」
転んでしまった石丸さんは足をひねってしまったようで立てずにいた。
「何だこりゃ、人工芝用のスパイクじゃねぇか。滑るに決まってんだろ、誰だこんなの渡したバカは!」
「あだだあだだ!」
『ヒル魔さん、やめてあげて下さい。痛そうです』
ひねっているであろう足をなんの躊躇もなく持ち上げるヒル魔さん。石丸さんも不憫だ。
「あ!」
「チッ……隠したいとかなんとか言ってる場合じゃねぇな、しょうがねえ。糞碧眼、桜庭だけでもいい、排除しておけ」
『……わかりました』
「テンメー、糞主務!!スパイクくらいちゃんと見分けやがれ!」
「ひーーごめんなさい!」
「ともかく死刑にしてやる!」
「ひぃいいいい」
ヒル魔さんはセナを引き連れて校舎裏へと姿を隠した。
『さてと、私も仕事に掛かりますか。』
きっと今ヒル魔さんがセナにユニフォームを着させているころ。
『あまり、気が乗らないけどやるしかないか』
私は大きく息を吸った。
『あ、あれは!ジャリプロの桜庭君だ!』
「「「さ、桜庭君っ!?」」」
「「「きゃー!!」」」
女の子がまるでミサイルのように桜庭さんへと突っ込んでゆく。あれはトラウマ並だ。
と、よくよく見れば何故か進清十郎も姿を消していた。好都合だ。
「あーよく殺した!」
「……」
酷くスッキリとした表情で校舎裏から姿を現したヒル魔さん。
「そうそう、石丸くんの代わりは?」
「ピンチにはヒーローが来るもんだ」
ズザザザァァ!!!とグラウンドの砂が舞い上がる。
「紹介しよう、光速のランキングバック、アイシールド21!!」
そこには一人のヒーローが立っていた。
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