過去の悪夢
ここは、どこ?
真っ暗な空間にポツリとある真っ白い空間。
真っ白い空間に真っ白いベッド。そこにあるのは真っ黒な髪の毛を持った少女。
『お母さんっ!お母さんっ!!』
あれは、小さい頃の私?
どうして、どうして泣いているの?
『お母さんッ!』
「悠里、貴女はいい子、ね。きっと、貴女を分かってくれる人が、現れるわ……。幸せに、なりなさい、ね……」
『お母さん?お母、さん……?う、うあああぁぁぁあああぁぁぁああああああああ』
そう、だ。お母さんが死んで、それで、それで……。
空間は全て真っ黒になる。
また一つ真っ白になり私の目に映る女性と少女。
「貴女が悠里?あの生意気な女にそっくりね。まあいいわ……せいぜい私のために働いて頂戴ね?」
そうだ、私はあの日決めたんだ。もう、絶対に泣かないって。
そして、あの時に私は、
感情を、殺したんだ。
『うっ…………ハァ、ハァ、……いやな夢……だ、』
朝からいやな夢を見た。
昨日は調べものがあったから寝たのが午前2時。今の時間は朝の5時。占めて3時間睡眠か。少し寝不足な気もするけど、3時間寝れば十分だろう。
私はさっとトレーニングウェアに着替え、外へと飛び出した。
4月といえど、まだ朝は寒い。冷たく鋭い空気が肌を刺激する。
『あれは、進清十郎』
朝靄の中見慣れたシルエットを見つける。今月の月刊アメフト表紙、高校最速最強のLB。王城ホワイトナイツの進清十郎。
今日も何時も通り軽く目を合わせ、無言ですれ違う。朝のランニングでの日課だ。
そして30分近く走ったあと家に戻り軽くシャワーを浴びて着替え、朝ご飯を食べて学校へと向かう。
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