Bitter Sweet | ナノ

知らぬが仏とはまさにこのこと
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時は変わって放課後、二人は部活で居残りをしていた。

葵と結奈はクラスが違うので朝と放課後しか一緒にいることがない。


「ねぇ結奈。朝、杉村君埋めることは無かったんじゃない?」

「だってぇ〜。ウザかったんだもん。」

ぶぅっと唇を尖らせて結奈は拗ねたふりをする。

「いや、可愛く言われても…。」

「あーぁ、男尊女卑なんて思想なくなればいいのに。」

「とりあえず、あんたは男女平等って言葉を知ろうか。ずっと思ってたんだけどさ、なんでそこまで男が嫌いなワケ?」

「………………なんとなく?」

理由になってない上に疑問形だった。

「………。聞いた私が悪かった。じゃあ、どこが嫌なの?」

「ガキだし、ウザいし、うるさいし、なんか群れてるし。」

「それただの悪口……。確かに最近の男子の女々しさは目に付くけど…。」

「でしょ?だから私は男なんていなくなればいいと思うの。」

「いや、それはぶっ飛びすぎだって。アンタ嫌いなものに対してとことんえげつないよね。」

「そう?ありがとう。」

「褒めてないから。話は変わるけど、うちのクラス、結局文化祭で何やるんだっけ?」

「確かホスト(笑)喫茶。」

「(笑)ってなによ。うちのクラスのビジュアルでホストってかなりイタいけど、それは言っちゃいけないよ。ホストかぁ…女子は裏方だよね…。」

「私は接客するよー。」

「え?まさか…。」

「うん。男装する。」

「男子、可哀想に…。」

結奈は以前にも男装したことがあるのだが、もともと中性的な顔立ちのせいか全く違和感が無かった。寧ろ女の子のファンが増えたくらいだ。

「今度はどんな格好するつもりなの?」

そう葵が聞くと待ってましたと言わんばかりの満面の笑みで結奈は答えた。

「えっとね、ポニーテールにしてスーツを着るんだ!」

「へぇ〜。あ、似合いそうだ。」

「えへへ。」

葵に誉められてふにゃっと笑う結奈にはいつもの尖った雰囲気はない。
いつもこうしていればいいのに、と葵は思う。
今の無愛想な態度が男除けにもなっているのも確かだが、せっかく綺麗な顔をしているのに笑わないのは勿体無い。

「岬さんがポニーテール…だと…?」

振り返るとそこには若干やつれて、呆れ顔の遥と別の世界に飛んでいる明人。

「なんか…杉村君の周りに花が飛んでる気がする…。」

「あぁ、コイツは気にしないでくれ。ただのアホだから。なぁ、そろそろ帰ろうぜ。」
「うん。私たちもちょうど帰ろうと思ってたんだ。」
「それじゃあ帰るか、4人で。」
遥がそう言った途端、結奈は嫌そうに顔をしかめ、明人はぱぁっと顔を明るくさせた。



「ゆーいなさーん」
「……………。」
「ゆーいなさーん。」
「ウザい。名前を伸ばすな。」
「ひどいっ」
「私、いつ名前で呼んでいいって言った?」
「で、でも、苗字で呼ぶなって…。」
「知らない。」
「あぅ……。」
「で、何の用?」
「聞いてくれるんだ!」
「早く言いなさいよ。」
「メアドと携番教えてください!」
「ヤダ。」
「教えて!」
「絶対イヤ。」
「教えてください!お願いします!!」
「死んでもイヤ」

断固として断り続ける結奈にとうとう土下座をして頼み込む明人。

「うわー、また土下座したよ…。」
「明人、お前にはプライドというもんが無いのか…。」
「結奈……可哀想だからもう教えてあげなよ…。」
「えー………。」
「私も一緒に接客やってあげるからさ。」
「チッ、仕方ないな…。」
「あ、それで釣れるんだ。」

結奈は物凄く嫌そうな顔をして携帯を出した。

「つ、ついに結奈さんのメアドを手に入れたぞ!!」
「ついにってお前…まだ知り合ってから一日じゃないか…。接客って、お前らのクラスは喫茶店とかやんの?」
「うん。ホスト(笑)喫茶。」
「なんか間の(笑)が気になるんだけど…。ってことは2人とも男装するんだ。」
「そうだよ。あれ?さっき聞いてなかった?」
「それは明人だけだよ。急に走り出すからビックリしたよ。どこ行ったかも分かんないし。」
「遥もなかなか苦労してるんだね…。」
「まぁ、今の明人がすっ飛んで行きそうな所って言ったら、岬の所くらいだからな…。」
「こっちはいい迷惑よ。高瀬、何とかできないの?」
「出来たら苦労しないよ。」
「それも、そうね。」
「私たち、こっちだから。」
気付くといつもの分かれ道。葵と遙とはここで分かれる。
「ちょっと待って。もしかして、私こいつと同じ方向?」
「そう…なるね。」
「え?嫌なんだけど。私も葵送ってく!」
「じゃあ俺も!」
「お前は黙れよ。岬、運命だ。受け入れろ。」
「そんな運命嫌過ぎるでしょ!」
「一応明人はもてるぞ。」
「そんなの知らない!ウザいのは変わんない!」
「酷い言われようだね、杉村君。」

その明人はというと……。

「結奈さんと二人で帰れるなんて、夢みたいだ…。」

自分の世界に浸っていた。







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