多分、否きっと佐助の生きる意味は幸村が生きているからだ。
幸村が生きていなければ、佐助は存在していない。
幸村は佐助にとって救いであり、安らぎであり、光である。
そんな幸村がいてからこそ佐助は存在していられる。
佐助にとって幸村は全てなのだ。
佐助という男を作り上げたのは幸村なのだ。
「佐助」
「なんですか?」
「いや、呼んだだけだ」
「あ、お茶でもしない?」
「あぁ、そうだな。頼む」
幸村は思う。
佐助は出来すぎた忍びだと。
だが、手放せるかと聞かれたらそれは否だ。
幸村にとって佐助は一部だった。
幸村は佐助に何かを預けている。
それは想いであり、信頼でもある。
そして最近気付いた事があった。どんなものか、若い幸村でも気付いていた。
恋なのだ。もっと深く言えば愛なのだろう。
佐助は幸村にとって、兄弟でもあり、友であり、家族でもあった。
だから、最初は戸惑った。
友であり家族だと、その様に思っていた相手に恋をするなどと許されないと。
しかし、月日を重ねる内に佐助を想う気持ちは一層深くなった。
そしてこの想いは独占欲だとも気付いた。
「俺は、欲深い…」
佐助を自分だけのものにしたいと思ってしまう。
もう佐助は己の一部であるのに、その全てを手に入れたいと望んでしまう。
「旦那?」
「佐助」
「お茶の準備出来たよ」
「すまない」
「何か悩み事?」
「………あぁ」
「何か俺に話せない事?」
「お前の事を考えておったのだ」
「俺の事?」
佐助は幸村にお茶を渡しながら首を傾げた。
「佐助は俺の忍びだ」
「うん」
「俺の影であろう?」
「そうだよ」
「影は俺の一部だ」
「そうだね」
「だが、俺は佐助の一部だけではなく、全てが欲しい」
「え?」
「俺はお前を好いておる。だが、それだけでは足りぬのだ」
「足りない?」
「もっと望んでしまう、俺は欲深い…」
頭を抱えた幸村に佐助は小さく微笑んだ。
「いいんだよ、旦那」
「佐助?」
「望んでいいよ、欲深くてもいい」
「だが…」
「俺はね、旦那の忍び。旦那だけの忍び。俺はね、旦那のものなの」
「でも、佐助…」
「誰よりも旦那に仕えてる。それは旦那がよく知ってるだろ?それに俺はもう旦那の一部だ、それが全部、旦那のものになったって別に構わないよ」
佐助は穏やかに微笑んだ。
「出来たらどうかずっとお側に置いてください」
「あぁ、当たり前だ!俺が佐助を手放すものか!」
ニカッと笑う幸村に佐助はふわりと笑い返した。
「ずっと、ずっと旦那に仕えて来た、そしてこれからもずっと。旦那が望むなら俺はずっと旦那のお側にいます」
それが佐助のこの世に生まれ落ちた理由なのだから。
「ならば、佐助、お前の全て貰い受けるぞ」
酷く嬉しそうに笑う幸村を見て佐助は頷いた。
(最初から俺は旦那のものだよ)
(旦那がいなかったら、今の俺はいないよ)
「お側に置いてください」
(旦那が望むなら)
それが生まれ落ちた理由
09.0719
風花
シ/ドを久しぶりに聞いたら
凄く真田主従ソングだったんです。