キンコーン、とドアのチャイムが鳴れば、レジからは威勢のいい声が響いた。
「いらっしゃいませー」
「らっしゃい!!」
レジ打ちしてるのは眼帯の男、袋詰めしてるのは明るい夕日色した髪の青年。
「今日は二人そろってますな」
「ああ」
店内に入って来たのは幸村と元就だった。
「あれ?旦那どうしたの」
「元就まで、珍しいな」
客の足も途絶え、佐助と元親はカウンターから離れた。
「生徒会の仕事帰り?」
「あぁ、」
生徒会の仕事で高校に行ったとはいえ、元就も幸村も私服である。
「チカ殿、いつものを頼む」
「おう、これだっけな」
元親はカウンターの背後にズラリと並んでる煙草の棚から慣れた様に煙草をレジに出した。
「ちょっと旦那!!あれほど駄目って言ってるでしょ!」
「仕方ないだろ、それに今日は我慢した方だ」
「当たり前だ、馬鹿者、生徒会室は禁煙だ」
元就はふんっと腕を組んで告げた。
「政宗から貰わなかったのか?」
「政宗殿のはあまり好きではない」
320円な。
ではこれで。
「ちょっと旦那!!」
「猿飛よ、今に始まった事ではない」
「そうだぜ?」
「でも、旦那未成年だし」
「それなら政宗殿も同じ」
「伊達ちゃんはいいの!まさか……」
「察しがいいな、猿飛」
「バイト中、しょっちゅう吸ってるからなぁ、こいつら」
幸村も実はこのコンビニのバイトなのだ。しかし生徒会があるためバイトの時刻は夕方で、佐助と組む事が少ない。主に組むのは政宗と幸村の二人。
このコンビニ、レジの横から店内の裏に入れる。監視カメラで店内の状況を見てれば常にレジに立っている必要はない。
だから幸村は政宗と組む度に裏で煙草を二人で吸いながら店内を監視カメラで見ている。
店長ももう苦笑するしかなく見てみないふりをしている。
まぁ、夕方になれば店長は帰宅してしまいバイト陣しか残らなくなるから好き勝手出来る。
「旦那、聞いてないよ!!」
「今更だろう」
「だからって…!」
「客だ、元親、猿飛」
元就の声に幸村は元就と共にレジから離れた。
「帰りますか元就殿」
「待ってなくていいのか?」
「今はこれが」
幸村は苦笑して煙草の入ったポケットを叩いた。
「先に失礼する」
「おう!お疲れさん!!」
佐助は何か言いたがっていそうだったが幸村は店内を出るとすぐに煙草のビニールを外し、口にくわえた。
「少しは素直になったらどうだ?」
「口寂しいと?」
「猿飛なら何か策を考えよう」
「元就殿、これは俺にとって安定剤なんですよ、」
「ほどほどにしろ」
「えぇ、心得ています」
この薄暗い感情を少しでも封印するために吸い始めたのが最初。政宗に一本貰って吸ってみたら、自分に合っていたのだ。まぁ前世でも煙管を吸っていた記憶もある。
だから懐かしくてつい吸ってみたのだ。
そしたらどうだ、薄暗い感情は落ち着きを取り戻した。
どうやら佐助に対してどうも感情的になりやすいらしい。幸村はそんな感情を押さえるためにも煙草を吸っている。
「素直に堕ちればいいものを」
煙草の煙と共に幸村は本音を吐き出した。
「恐がれて逃げられないように気を付けよ」
「えぇ、そうします」
煙草をくわえたまま幸村は薄く笑った。
人でなしの恋
08.0520
風花