「俺は独りなのか」
紅蓮の鬼はそう哭いた。
屍を積み上げた戦場で、そう呟いて哭いた。
友もいない。
肉親も家族もいない。
いるのは同じ武田軍の武将と従者と敬愛する師。
しかし、それは紅蓮の鬼にとっては同胞ではない。
嗚呼、独りなのか。
紅蓮の鬼はそう、ポツリと呟いた。
そして、天を仰ぐ。
空は曇り今にも雨が降りそうだ。
「旦那」
「佐助」
紅蓮の鬼――、真田幸村は従者の呼び声に応えた。
そして、幸村は従者の忍びに問うた。
「佐助、俺は独りなのか」
「はい、貴方様は独りです」
「そうか、」
鬼は哭く。
自分と同じ同胞がいない事に。
自分と同じではない従者との立場の違いに。
(俺は、)
(俺は、一体なんなのだ?)
(俺は、なんのために生きている?)
天を仰いだ顔に冷たい雫石が落ちてきた。
紅蓮の鬼は、空を仰いで声にならない声で叫んだ。
それは哭き声だった。
たった独りで生きている紅蓮の鬼の慟哭。
それをただ聞きながら忍びは悲しげに瞳を閉じた。
鬼は哭く
09.0405
風花
幸村ってある意味
孤独だと思うのです。