「ぁ…」
目を覚ませば、其処は闇ではなく灯りのついた部屋だった。
「大丈夫ですか?弁丸様」
心配気に覗き込む色は、
(夕日色)
「さすけ…」
「佐助がお側にいます。だから怖いものはありませんよ」
微笑んで佐助はその左手を握った。
(あたたかい)
その温もりに弁丸は緊張した筋肉を緩めた。
「ずっと傍にいるのか?」
「はい、ずっとお傍にいます。弁丸様が目を覚ます時も佐助がいます。だから安心して眠ってください」
「ありがとう、佐助」
弁丸はぎゅっと佐助の手を握り返すと眠りに落ちた。
懐かしい夢を見てた気がする。
幸村は起きたての思考で天井を見上げていた。
「どうしたの?旦那」
ふいに声が落ちてきた。
幸村はその声に視線を向けた。
幸村の枕元に座り覗きこむ佐助。
「どうしたの?怖い夢でも見たの?」
佐助は微笑むと幸村の頭を優しく撫でた。
「佐助?」
「涙の跡」
佐助は微かに残る幸村の涙の跡を拭った。
「怖いもんなんてないよ」
「あぁ、そうだな」
幸村は頭を撫でる佐助の手の温もりに瞳を閉じ、先程まで見ていた夢を思い出した。
いつも傍いる。明るい灯火。
なんて綺麗な夕日色だろうか。
いつもその温もりに安心した。
「佐助、」
「なに?」
「いつもお前は傍にいるな」
「だって貴方の影だもの」
「そうだったな」
くすり、と笑って幸村は佐助の腕を掴んで、佐助を抱き寄せた。
「旦那!?」
「灯火があるからこそ、俺は燃え尽きない」
「旦那?」
(そうだ、俺には佐助がいる。俺を照らす灯火が。)
「佐助、」
「なに?」
「ずっと俺を照らしてくれ」
(そしてずっと二人、共に在ろう)
灯-akari-
09.0208
風花