(ねぇ、俺は貴方のために何が出来る?)



「佐助」
「はいはーい、呼んだ?」
「呼んだ。だが…」
「どーしたの?旦那」
「お前こそどうした」

手が伸びて、佐助の頬に触れる。

「何故、泣きそうな顔をしておる」
「なにいって…」
「俺には誤魔化せんぞ」
「………適わないね」

佐助はそう呟いて無理矢理作っていた笑みを崩した。へにゃりと壊れたそれは今にも泣きそうな顔に変わった。

「ねぇ、旦那。俺は貴方のために何が出来る?」
「佐助、」
「俺は忍びで、でも人で、いつか終わりがくる」

忍びとして死ぬか、人として天寿を全うするか、分からないが終わりは必ず来る。

「ずっと傍にいられないかもしれないんだ。だから、それまで俺は貴方のために何かしてあげたい」

限りある命の中、貴方にしてあげれる事はなんだろうか。

「俺は、貴方のために何が出来るの?」
「………馬鹿者。」
「え、」
「この大馬鹿者め!何が出来るかなど俺に聞くな。お前はとっくに俺のために生きておるではないか」
「で、でも…」
「でもではない!お前の命は、お前の心は誰のものだ?」
「旦那…幸村様のものです」
「答えなどもう出ておるではないか。お前の命、心はこの幸村のもの。お前が生きてるだけで、お前がいるだけで、いいのだ」
「だんな…」
「お前がいるだけで俺は俺でいられるのだ」

幸村は今にも泣き出しそうな佐助を抱き締めた。

「全く、お前は本当に可愛いな」
「可愛くなんてない…!」
「そうやって俺の事を思い、涙を流すお前の何処が可愛くないのだ?愛しく思う」
「だ、んなっ…!」
「大丈夫だ、佐助。俺達は死する時も一緒だ」

幸村は佐助の手を握り締めた。

「死する時も、また生まれ落ちる時も俺達は一緒だ」
「本当…?」
「あぁ、本当だ」
「旦那と一緒ならいいよ」

佐助は泣き腫らした目で笑い幸村に擦り寄った。

「不思議だね」
「何がだ?」
「不安じゃなくなったよ」
「一緒だからな」
「うん、ずっと一緒だから怖くないよ」
「佐助、来世でも共にいよう」
「うん、一緒にいさせてよ、旦那…」

佐助は瞳を閉じて幸村のその唇の熱を感じた。

(嗚呼、満たされる)

心も身もこの方のために。
現在でも、来世でも共にいよう。
この方が寂しくないように。


ずっと



08.1022
風花




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