堕ちてくる夕日を殺したいと思った







世界樹の悲鳴が聞こえる。耳を塞ぎたくなるような甲高い声だ。それだけ世界樹は苦しんでいるのか?いや、この声はそんなんじゃない。悲しみの声だ。深い深い悲しみの声。あの時に聞いた以来だと思った。
あの子はついに失ったままだったのだ。
酷い虚無感が襲ってきた。
行かなければならない。あの子を守る者として、最期はあの子の隣にいてやらなければならない。それが自分の使命であり、運命だ。


「結局は何も出来ないけれど」


けれど、自分は何も出来ない。唯一出来たのはあの子に何があっても信じ続ける事。それが果たしてあの子の救いになったかさえ、もはや分からない。
今までの事が駆け巡る。愚かな命は結局存続してしまった。そう考えると、頭が痛くなって来た。ガンガンガンガン、何かに責められているようにも感じる。
お前は無力だ、無能だ、あの子を救えなかった、何もしてやれなかった、お前もあいつらと同じ愚か者だ!
夢は終わりだ。歩き続ける夢は、覚めてしまった。あの子の夢も世界樹の夢も全て。自分もこの世界にいられるだろうか?自分はあの子と共にある為に存在しているのに、あの子がいないなんて。そんな事は有り得ない。あの子があるから自分はあるのだ。だからあの子がいない世界なんて有り得ない。有り得るはずがない。


「だからもうすぐ世界は終わり」


あの子を裏切った世界は終わり。救われる事もなく、全てが終わりとなる。終幕、終焉。それだけだ。誰ももう止めることは出来ないだろう。何せ、あの子は死ぬのだから。あの憎きウィダーシンと相討ちになって。


「さようなら、儚き夢…」


地平線に沈み行く夕日が、気持ち悪く思えた。吐き気がして、でも反対に愛おしく思えるような矛盾がある。その矛盾の先に、殺意があった。



































(また朝が訪れる事が憎かった)





 
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