溢れる光を手に掴んだこともなかった







ひらひらひらひら。
全ての光が散っていく。テレジアの尊い命が散っていく。嗚呼、嗚呼。世界樹が泣いている。尊い命が散っていく様を見て、世界樹が嘆き、苦しみ、悲しんでいる。哀れんでいる。


「嗚呼、嗚呼!」


早く何とかしなければ!そうでなければ母なる世界樹が悲しみに暮れてしまう!もがき苦しむ様を見ることになる!


「嗚呼、世界樹。例え尊き命たちに裏切られようとも、私には母なるあなたがいればいい…」


あなただけは決して私を裏切らない。だってあなたが私を生み出し、この世界へ放ったのだから。
世界樹の幹にそっと触れる。とても弱々しいけれど、確かな鼓動が聞こえる。子供のような、子守歌のような優しい鼓動。それを聞くと、とても安らかな気持ちになれる。荒らんだ気持ちも静めてくれる。失った心が蘇ってくる気がする。それも全て幻だけれど。


「世界樹…、次はどうすれば良いのかしら?ギルガリムはどこにいるの?あなたの悲鳴を呑み込んであげるわ…」


私はあなたの夢。歩き続ける夢。あなたが見たいモノ、触れてみたいモノ、全てのモノを見て、触れて、理解してあげる。だって私はあなたの夢。大事な大事な夢なのだから。
ふわり。
世界樹から光が舞い落ちる。それはふわりふわりとゆっくりと落ちてくる。美しい。これが世界樹の光。優しい母なる樹の光。


「嗚呼、世界樹。あなたの命はとても儚くて美しいのね…」


ふわふわ降りてくる光を指先で少し触れる。それだけなのに。


「え?」


光は触れた瞬間に散ってしまった。まるで命のように簡単に。
嘘でしょう?私はディセンダーで世界樹を守っているのよ?何故私が儚い世界樹の振り撒く命に触れられないの?いえ、それよりも最悪。だって今命は散ってしまった。私が…触ったから?何故なの?


「何故なの世界樹!?私はあなたを守ってここまで来たのよ!?何故、私は拒絶されているの!?」


とくとくと緩やかに穏やかに時を刻む世界樹は何も答えない。何故?いつもはもっと楽しく会話してくれるじゃない…?私が、嫌いになったの…?
いえ、違うわ。
ギルガリムのせいよ。あれがあるから命が弱まっているのよ。だから私が触ってしまって、消えてしまった。そうよ、それしか考えられないじゃない…。ギルガリム。許せない。私はあれを必ず倒す。



































(憎い。あの世界樹を蝕む存在が)





 
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