渇ききった唇を怨むこともなかった
全ては世界樹の為に。それだけの為に。だから、こんなのは苦痛でも何でもない。
「裏切り者」
何がどうなってこうなるのか、なんて愚問。きっと初めからこうなる運命だったに違いない。だって私は世界樹の夢。世界樹が外を知る為だけに存在している者。ディセンダー。だから仲間なんて不必要。
「俺たちを騙してたんだな」
静かに放たれる言葉だって痛くないわ。例えいくら冷たく胸を抉るような言葉だとしても、私にはもう痛くないの。だって私にはもう感情と言うモノが必要無いんですもの。私にあればいいのは、ギルガリムを倒す力と世界樹を守る力。そして世界樹。それだけあればいい。言葉さえ不必要。何もいらない。温かさも嬉しさも思いやりも、全て。
「上手く騙したつもりなのかしら?」
カチャリ、と金属の音がする。そう、私を殺すの?そして新しいディセンダーを生み出してもらおうとするのね。何て汚いの。私たちはあなたたちの都合の良い道具じゃないの。世界樹が生み出した守護者なの。だから私は殺されない。最後まで世界樹のために生きて、世界樹のために死ぬの。
「ふふ…」
滑稽だわ。人の心の変わりようなんて。私も彼らも、所詮は単純なんな生き物よ。
「あはははははははははははははは!!」
だから私はもう壊れてしまったのよ。
渇ききった唇を怨むこともなかった
(目の前に光なんて……ない)