ねぇ、いま、どこにいるの？
永遠の夢は歩き続ける力を失った。
そしてそれを共に歩く夢もまた、歩く者を失い、安定を無くした。
二つの夢は歩く道を失った。
クルム。
全ての命を愛しているあなたは、私にとって大切な子供であり、誇りです。あなたは最期まで愛を受け取る事なく、与える事しか出来なかった可哀想な子です。ですが、私はあなたを子供として精一杯愛しています。例え私の生み出した命に裏切られて苦しめられたとしても、私はあなたの母であり、父であるのです。だからもう苦しまなくて良いのです。世界はあなたのお陰で救われました。あなたは全てを失いながらも、ギルガリムと戦い抜いた。それは讃えられるべき事なのです。胸を張りなさい。あなたは救世主なのですから。
「世界樹」
ジン。
あなたも良く働いてくれました。クルムのために辛く苦しい思いをさせてしまいました。
「あいつが全てを取り戻した」
最期まであの子の為にありがとうございます。きっとあの子もあなたの事をすごく感謝しているでしょう。あなたがいたから、あの子も救われた。彼も、真実に目を背けなかった。
「もうあの子は裏切り者でも何でもない。この世界、テレジアを、世界樹を守った救世主だ」
全てが苦しみと化そうとも、痛みと化そうとも、あの子は頑張り続けた。健気な子供。愛しい我が子。もう誰もあなたを汚す者はいないでしょう。あなたを恨む者はいないでしょう。あなたを憎む者はいないでしょう。あなたの亡骸を侮辱する者もいないでしょう。
さあ、ゆっくりと永遠に眠りなさい。
誰もあなたの眠りを妨げる者はいないのですから。
「クルム。世界樹は今日も綺麗だ」
暖かな柔らかい声。彼が今日も私の前に立って見上げている。さわさわと揺れる子守歌のようなさざめきを。
「今、平和なところにいるか？どこにいるんだ？」
ふわりと風が葉を揺らして行く。その風から懐かしい雰囲気を感じた。
嗚呼、あなたはやはりそこにいるのですね。
『私はいつもここにいるわ…』
けれど夢はまた世界樹を守り続けている。大好きな世界と、世界樹と、世界樹が生み出した命を…。