不明快な目的


 
 
 
 
 
随分前から思ってたんだけどよォ、あいつってやっぱり未来予知とかそういう能力持ってんじゃねぇのか…?だってよ、俺たちがダアトに行く前にダアトに戻ってったんだからよ。いや、単にヴァンの動きが気になるからかもしれねぇけどさ、ラスティの事だからありえそう…。
って話がそれたが、今俺たちはダアトに来てんだよ。何でも、セフィロトが不調らしくて、それをどうにかするための方法を探すためにイオンに会おうって事になった。それで、ローレライ教団に入ろうと思ったんだが…。
 
 
「いつになったら船を出してくれるんだ」
 
 
「港に行ったらここで聞けと追い返されたぞ!」
 
 
扉の前に群がってる大量の人。その人たちに囲まれてんのは確か…、トリトハイム…だったか?そいつが落ち着いたように声を張った。
 
 
「ルグニカ大陸の八割が消滅した!この状況では危険すぎて定期船は出すことは出来ぬ!」
 
 
そういえば今回の外殻大地降下の事を知ってるのって俺たちぐらいだよ…な…?事情を知らねぇ奴からしたら大地がいきなり無くなったようなもんなんだよな…。気づいたらトリトハイムが周りにいた奴らに何かを言って解散させていた。ガイたちの話を聞いてると、戦争は休戦状態になったらしい。まあ、大地がなくなったのに平気で戦争してたらそいつは気違いだろうな…。
 
 
「イオン様に面会しましょう」
 
 
ジェイドの言葉に頷いて俺たちはローレライ教団の中に入って行った。と、同時に。
 
 
「ようこそ、ルーク様ご一行」
 
 
ハートでも付きそうなぐらい上機嫌で俺たちを迎えたのは、深紅の髪の男。まあぶっちゃけラスティだ。そのラスティが扉を開けた瞬間に待ち構えてんだ、びっくりしちまうのはしょうがねぇだろ。ジェイドとかはまぁぁぁったく驚いてねぇがな。
 
 
「いやぁあ、いると思ってましたよ、ラスティ♪」
 
 
「ちっ!テメェに名前を呼ばれても嬉しかねぇっつうの!さて、お前たちの用事は大方イオン様だろ?安心しろよ。俺が連れてってやるから」
 
 
にやりと楽しそうに笑ったラスティの視線の先には頬を膨らませたアニスがいた。それの意味を分からずに首を傾げていると、ラスティはさらに笑みを深くしてアニスの頭を撫でた。
 
 
「導師守護役の出番を取って悪かったな」
 
 
「ぶぅ〜!」
 
 
ああ、なるほど。導師守護役のアニスだってイオンの所に連れていけるのにその出番を持ってかれたから拗ねてるのか…。他の奴らもそれに気づいたのは微笑ましい顔してアニスを見ている。
 
 
「ほれ、ついて来い。さっさと行かねぇとめんどいもん来るかもしれないから」
 
 
「面倒なもん?」
 
 
「お前らさ、ここが敵の総本山って気づいてるよなぁ…?」
 
 
呆れたようなため息をつくラスティにそういえばそうだったと思わず思っちまった俺はきっと馬鹿なんだろうな…。もういいけどよ…どうせ馬鹿だし…。
ラスティについて行くと綺麗な紋様が描かれた床があった。これが…譜陣って奴が…。
 
 
「『ユリアの御霊は導師と共に』」
 
 
ラスティがそう言った瞬間、その姿が掻き消える。ルークはそれに驚いて声を上げるが、ティアが冷静にユリアロードと同じ原理だと言った。ああ、そういえば俺もユリアロード通ったな…。って、俺譜陣初めてじゃねぇじゃんかよ!
 
 
「よし、行くか」
 
 
ルークの言葉に続いて真ん中の譜陣に乗ってラスティが言った事と同じことを唱えると、すげぇ上の方に来ていた。ラスティは視線を寄越すだけで何も喋らなかったが、その後ろについて行った。廊下を歩いて行って奥にある部屋の扉を開けた。
 
 
「ん…?」
 
 
訝しげな声を上げるラスティに何事かと思って部屋の中を覗き込むと、そこには誰もいないもぬけの殻だった。
 
 
「イオンの奴、どこに行ったんだ?」
 
 
ルークが部屋の中をキョロキョロし始めた瞬間、誰かの気配を感じ、ルークの口にそっと手を添えて黙らせた。ラスティももちろん気づいたのか、背中のリリーにそっと触れていた。
 
 
「奥にもう一室ある。そこに隠れるぞ」
 
 
ラスティは小さく幻神と唱えながらルークたちを奥の部屋に押し込んだ。その瞬間、俺たちが入って来た扉から誰かが入って来た。
 
 
「ふむ……。誰かが来たと思ったが…気のせいだったか…」
 
 
この声!!あのムカつくモースの声じゃねぇかよ!!
 
 
「それより大詠師モース。先程のお約束は本当でしょうね」
 
 
げっ!この声も良い思いがねぇ…。セントビナーの時に邪魔しやがったディストじゃねぇかよ…!つか約束って何だよ…。
 
 
「戦争再開に協力すればネビリム先生のレプリカ情報を…」
 
 
「任せておけ。ヴァンから取り上げてやる」
 
 
「ならばこの『薔薇のディスト』、戦争再開の手段を提案させていただきましょう。まずは導師イオンに停戦破棄の導師詔勅を出させるのがよろしいかと」
 
 
「ふむ。導師は図書室にいたな。戻り次第、早速手配しよう」
 
 
二人はそれだけ言うと部屋から出て行ってしまった。つうかそんな話をするならここに来なくてもいなくてもいいじゃねぇかよ…。気配が遠ざかったのを確認してから幻神を解くラスティを見ながら、ジェイドはため息をついた。
 
 
「…今の話を聞くと、モースとヴァンはそれぞれ違う目的の為に動いているようですね」
 
 
どうやら話は深刻らしいな…。俺には全くついて行けそうにないぜ…。ヴァンの目的もわからない以上、考えても無駄だと思うし…。ラスティも何かを考えているのか、深刻な顔をして腕を組んでいる。
 
 
「とりあえずよ、お前さんたちはイオンに会いに行けよ。話によれば図書室にいるんだろ?」
 
 
「あなたはどうするんですの?」
 
 
「俺は…、まあヴァンの動向を探っては見るが…。上手くいかねぇだろうな…。とりあえず裏方で色々してみるよ」
 
 
「わかった」
 
 
ラスティはそれだけ言うとイオンの部屋から出て行ってしまった。あいつもヴァンの計画がわからなくて困ってんのかね…。とりあえず、俺たちは戦争を止めなきゃならないな…。いざとなったら多分あいつが助けてくれるだろうし…。よし、まずはイオンに会いに行くかぁ!!
 
 
 
 
 

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