立場逆転


 
 
 
 
 
とりあえずケセドニアも崩落の危機にあるっつう話になりましたので、この地域を支えているセフィロトを何とかしようと俺たちはザオ遺跡に行くことになりました。そんで、これはいい子はやっちゃいけないんだけど、俺はリリーの力を使ってルークとアッシュの回線をちょっと盗み聞きしちゃいました!えへ☆
 
 
「うぐっ!?」
 
 
「うぜぇ…」
 
 
そして今良くわからないけど俺の考えてたことがわかったスパーダに思いっきり鳩尾を殴られたよ!若干理不尽な気がするけど、俺は細かいことは気にしないでおこう!!凄く痛かったけどね!!そんで、お邪魔した回線からもルーク本人からも聞いたんだけど、ザオ遺跡の前にアッシュがオアシスで待ってるから来いってよ。てか話があんならテメェが来いって話だよな☆
 
 
「ぐはっ!?」
 
 
「テメェの頭は病気かァ?」
 
 
そして何故かスパーダ君が激しく不機嫌である…。またしても殴られた。いや、今度は蹴りだよ!お腹がくの時に曲がったよ!まあなんとなく理由はわかってんだけどさ、うん、言わないでおこう。多分向こうも無意識だろうし。
そんで、ようやく本題に戻すけど俺たちは今アッシュのいるオアシスに辿り着くことが出来ましたとさ!
 
 
「やっと来たか…」
 
 
だからテメェが来いよ☆って話はとりあえずシリアスな雰囲気なのでおいておこう。そろそろスパーダに殺されそうだし…。
ルークが訝しげにアッシュに問いかけると、アッシュにしては珍しくルークの事を真っ直ぐ見つめて問いかけてきた。
 
 
「何か変わったことは起きてないか?意識が混じり合ってかき乱されるというか…」
 
 
どうやらアッシュは何か大切なことを知ってるみたいだな…。これは後で俺も聞いとかないといけないかも知れないな…。しかし、どうやって知ろうかねぇ…。ジェイドに聞いてみるか…?いや、この陰険大佐が教えてくれそうにないな…。
 
 
「はあ?意味わかんねぇ…。お前が俺との回線を繋いでこなければ変なことは起きねぇし…」
 
 
ルークは本当にわかんないのか素直に答えている。アッシュに対して特に複雑な感情は抱いてないみたいだな…。
 
 
「アッシュ、何かありましたの?どこか具合が悪いとか…」
 
 
ナタリアの純粋な心配に、アッシュの顔が何とも言えない表情になる。ああ、これが噂のツンデレか…。あ、違った。スパーダもツンデレだった…。
 
 
「うっ!?」
 
 
「テメェは黙ってろ」
 
 
口的には全く喋っていないが、スパーダには脳内の発言許可も下りなかった…。これってもはや人権侵害じゃね…?
 
 
「…別に」
 
 
「おい、それだけかよ」
 
 
ガイの厳しい言葉に対し、アッシュは動揺もしていない。全くこいつは賢いんだか馬鹿なんだか…。
 
 
「…エンゲーブが崩落を始めた。戦場の崩落も近いだろう」
 
 
そうか…。もうあそこも崩落しそうになってんのか…。だとしたら本格的に戦場は危ないかもしれねぇな…。戦場にいる兵士だけじゃない。ケセドニアも危ないな…。
 
 
「このままでは戦場にいる全員が死んでしまいますわ!」
 
 
「馬鹿野郎。ここにいたらお前も崩落に巻き込まれて死ぬぞ!」
 
 
ナタリアの言葉にアッシュは眉間にしわを寄せてそう叫んだ。が、これって完璧ナタリアだけを心配してるよな…。本当にこいつは色んな意味で馬鹿だと思う…。
 
 
「なんかぁ、私たちは置いてきぼりって感じじゃない?」
 
 
俺がスパーダの人権侵害に怯えながら状況を見つめていると、アッシュとナタリアの若干のイチャイチャ具合に腹立ったアニスが声をかけてきた。頬は完全に膨らんでる。いやぁ、確かに俺から見てもあれはバカップルだよな…。
 
 
「てゆーか、アッシュって一応同僚に当たるんでしょ?声かけなくていいの?」
 
 
「ああ、分かった。そこまで言うなら声かけてくるよ」
 
 
ここで本来俺がかける言葉なんかありゃしない。だってアッシュに話す事なんてほとんどないし、俺こいつと大して仲良くないし…。アリエッタやシンク、ラルゴとならそれなりに付き合いあるけど…。
 
 
「アッシュ」
 
 
後ろにいた俺が前に出てくると、全員が意外そうな顔をして俺の事を見ていた。アッシュも突然来た俺を不思議に思っているのか眉間にしわを寄せている。だからあえて俺はここでトンデモ発言をしてやろう。
 
 
「悪ぃな!俺、お前とルークの回線盗み聞きしちゃった!」
 
 
テヘペロ☆なんて効果音が付きそうなくらいはっちゃけて言うと、アッシュが口を開いたまま間抜け面で俺の事を凝視していた。俺はそれに満足したので踵を返して元の位置に戻ろうとしたらアッシュに肩を掴まれた。
 
 
「て、テメェ!どうやって…!?」
 
 
「どうって…」
 
 
――こうやって?――
 
 
「「「「「「「!?」」」」」」」
 
 
リリーの力を使ってスパーダ以外の全員にリリーの声を聞かせると、全員が驚いて俺の方を見た。リリーの力を知っているのはこの世界において俺とスパーダだけだ。ルークたちはリリーを見たことがあるが、あの時はちゃんと少女の姿だったわけだし…。
 
 
「な、何ですの…?頭に直接聞こえて…」
 
 
「おい、ラスティ…」
 
 
「構わねぇよ。どうせリリーの事は知ってんだから」
 
 
スパーダが俺の行動を軽率と捉えて口を出してきたが、俺としてはこれが早く知られるか遅く知られるかの差だったので大して重要視してない。だからあっさり教えるし。
 
 
「あなたには不思議な力があると常々思っていましたが…。我々の頭に直接話しかける力を持っていたとは…」
 
 
ジェイドが興味深そうに俺の事を見つめていたが、俺は野郎に見つめられて喜ぶ趣味はないのでめちゃくちゃ視線を外しておいた。それはもう首が反対側に向くくらいには視線を外してるね。
 
 
「今はそんなことは置いといて、さっさと外殻大地を降ろしちまおうぜ」
 
 
にっこりと笑みを浮かべながらそう言うと、アッシュは俺の言葉が正論だとわかったのか舌打ちしながらもセフィロトについて話し始めた。どうやらセフィロトっていうのはおんなじもの同士で繋がってるらしいから、解放されているもの同士を遠くから操作することが可能なんだとよ。それで、アッシュはとりあえず髭…じゃなくてヴァンの動向を探るらしいよ?
 
 
「おい、ラスティ!言っちまってよかったのかよ!」
 
 
アッシュが去った後、誰も動こうとしなかったので俺が一歩踏み出そうとしたら、スパーダに肩を掴んで止められた。俺はその言葉に笑顔で振り返って言ってやった。
 
 
「だって俺強いし。もしも俺になんかあった時は助けに来てくれるんだろ?騎士様」
 
 
視線の合った灰色の瞳は大きく見開かれていた。一体どういう意味の表情かわからないが、とにかくスパーダは驚いていた。隠し事をしてるくせに何を言ってやがる、とか、なら隠し事はすんな、とかそういう罵声を予想してたんだが…。
 
 
「死ね!!」
 
 
「なんでっ!?ぐはぁっ!?」
 
 
思いっきり顔面に右ストレートを入れられてしまいました…。顔痛い…。心も若干痛い…。つーか死ねとか酷くない…?地面に倒れこみながらしくしくと泣いているとスパーダに思いっきり踏まれた。俺としてはカッコ悪い悲鳴が出たが、スパーダはそれを無視して行ってしまった…。
 
 
「いやあ、まさに最低って奴ですねぇ」
 
 
良くわからんがジェイドに馬鹿にされた…。
 
 
「だからね、言ったじゃないかラスティ。スパーダは君を救おうとしてるって。君のそれは天然なのか嫌味なのか…」
 
 
良くわからんがガイに諭されなおかつ苦笑されたぞ……。良くわからん…。だが一つわかったことがある…。本日スパーダが異様に不機嫌なのは、俺が奴をセシル君と呼んでいたのにガイと呼んでいて、なおかつガイが俺の事を名前で呼んでいるからだ…!!要は嫉妬していたのだよ!!はっはっは!!全くスパーダは可愛い奴だな!!はは…ははは…。ガクッ…!
 
 
――馬鹿してないで行くわよ、スパーダ馬鹿――
 
 
リリーが辛辣で泣きそう…。何故なんだろう…。前の世界じゃ俺が弄り役だったのにすっかりスパーダにその座を奪われてしまった…。何がいけなかったんだろうか…。
 
 
――お前のせいだよ…――
 
 
リリーの言葉は聞こえなかったことにしておこう…………。
 
 
 
 
 

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