喜三太は泣きじゃくるわたしを心配するでもなく、ただ笑顔でナメクジのかわいさについて語っていた。
変に慰めるよりいいと幼いながらに思ったんだろう。
乱太郎の時みたいにならなくて助かったし、なにより嬉しかった。
からだを、……体を。
自分より小さな小さな体に支えられていた姿は、なんておかしなものだったのだろうか。
真夜中だったことに感謝したい。
喜三太を部屋へと送ってから、またさっきの場所へと戻ってきた。
言い切れない感謝の気持ちがぐるぐると体中を回っている。
もう一度見上げた月は、さっきより幾分傾いていて。
夜明けまであと何時間くらいかな?
さすがに寝ないのはよくないし、たくさん泣いたからか…眠い。
「…うん」
あなたは、あなただから。
喜三太の言葉を心の中で復唱した。
…そうだよ、わたしはわたしだよ。
名前さんになりきれないのは当たり前のことだし、みんなに受け入れてもらえないのも仕方のないこと。
でもまずは、そんなことを気にするより自分のするべきことをしないといけない。
例えば、事務の仕事だとか。
それにわたしには、理解者がちゃんといるもの。
あの人たちに迷惑をかけるなら、それこそいない方がいい。
「…よし、寝るか!」
儚い光を放つ月へと微笑みかける。
明日笑えない分、今笑っておかないとね!
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