斉藤くんはきっといい案内役になれる。
ここは綺麗な飴細工屋さんだよ、とにこにこ笑う斉藤くんを見ながらそう思った。
どうやら髪紐屋まで行く道のりにあるお店を紹介してくれるみたいだ。
わたしはこの町に来たことがないから、とても嬉しいけど…。
名前さんと来てたらどうなってたのかな?
名前さんは町に来たことがあるだろう…それでも、斉藤くんは同じように案内するんだろうか。


「あっ、ここ、この間名前ちゃんにあげたお団子のお店なんだよ」


そう言った斉藤くんの指の先にこぢんまりとした可愛らしいお店があった。
窓から「胡麻団子開始」と書かれた布が垂れている。
…なんか、夏場見る「かき氷始めました」みたいだ。


「名前ちゃんにあげたの、醤油団子だったよね?おいしかった?」


そう言われて、言葉を濁した。
わたしは斉藤くんにお団子をもらったことはない…だから、お団子をもらったのは名前さんだ。
おいしいかなんて、もらってないわたしにはわからない。


「とてもおいしかったですよ」


嘘だとバレないよう早口にそう言って、お団子屋の屋根に掲げれたメニューを流し読みする。
醤油団子、みたらし、あんこ…へえ、味噌団子なんてあるんだ。


「小松田さん何味が好きだろ…斉藤さんのおすすめってなんですか?」


いつもお世話になってるから、土井先生と鉢屋くんにも買っていこうかな…。
斉藤くんを見上げる。


「…斉藤さん?」


わたしの顔を見たまま微動だにしない。
少し垂れ気味の目がスッと細められていた。
わたしを見ているのに、見ていないような気がして背中が冷たくなる。
なんだか怖くて、繋がっている手を離したくなった。

なにを……見ているのか。
わたしを通して…斉藤くんはなにを見ているんだろう?
ふと、鉢屋くんの声が頭をよぎる。

―そういうこととなると私たちより勘が鋭くなるんですよ。

冷や汗が流れた。
バレた、という言葉が舌に乗る。
わたしはそれを無理やり呑み込むと、離しかけていた斉藤くんの手を強く握った。


「お土産に、斉藤さんがくれた醤油団子を買います。…帰りに寄ってもいいですか?」


手を強く握られたことで弾かれたように斉藤くんが瞬きをする。
少し考えたあと、斉藤くんは「もちろん」と笑ってくれた。

  

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