「中身が別のだれかでも、友達には変わりないんじゃないかなあって思いますー」
「…え、」
「だって見た目は変わらないんですよねえ?なら、いいじゃないですかあ。それがちがう人でも」
どうして?
どうしてそう思うの?
だって、中身は違う人なんだよ。
今まで育んできた友情が、全部ゼロになるんだよ?
相手は違う人なんだもん、知らないんだよ?
喜三太のことだって、…自分のことだって。
「中身がちがう人だってぼくの目に映るその人は友達なんだもん。友達なことに変わりないですよぅ」
「な、…なら、その中身の人がくせ者だったら?」
「悪さをしないように、ずーっとぼくが一緒にいます!」
撫でる手を止め、にぱっと笑う喜三太。
その笑顔は眩しくて、月とは違う太陽みたいで。
…喜三太は、まだ幼いから。
10歳の男の子で、わたしみたいな経験はない。
実際どうなるかなんてわからないんだろう。
喜三太がいうように友達には変わりないなんて、ない。
それでも、
「でもその人はきっと辛いですよねえ。ぼくだったら、…友達は友達、あなたはあなただからありのままの自分でいていいよって、言ってあげますー」
――それでも、わたしが欲しい言葉には変わりなくて。
名前さんは名前さん。
もちろん、わたしは、…わたし。
「それに、」
「…え」
「その人と仲良くなることができたら、それで友達ですよぅ。その人が友達に、ということはぼくとその人の関係は前と変わらな、い……?…名前さーん?」
眠くなっちゃったんですかあ?と言って、喜三太がわたしの背中を撫でる。
…っは、小さな男の子に慰められるなんて、わたしもそうとうきてるなあ…。
喜三太を強く抱きしめながら、わたしは静かに涙を流した。
月の夜(8/30)
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