「名前ちゃああん!」


ぶつかった拍子にわたしに抱きつき、泣き叫ぶ小松田さん。
ええ、ぶつかったの痛すぎたの?
わたしも痛いけどそんな泣くほど、


「心配したよう。何日もかおみてなくて、声きいてなくて!先生たちも教えてくれないんだもん!」

「…小松田さん」


数歩前にいる潮江くんが、目を見開いてわたしたちを見ている。
…まあ、驚くよね。
わたしは小松田さんの頭に手を乗せ、頭巾越しに撫でた。
小松田さんがずるずると洟をすする。


「…ごめんなさい。心配してくれて、ありがとう。小松田さん」


っく、と辛そうに呼吸をする小松田さんが、小さく頷いて更にわたしを抱き締めた。
背中に回る、見かけによらず逞しい腕。

頭に乗せていた手を、ゆっくり小松田さんの背中に回す。
ありがとう、心配して泣いてくれたの、小松田さんが初めてだよ。
母も父も、泣きはしなかったもの。
小松田さん、ありがとう。
すごく嬉しいよ。


「…次、一番最初に会うのは僕にしてね!」


体を離し、赤い目でにっこり笑った彼に、わたしは笑顔で返事をした。

体術(8/22)

  

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