「土井先生がわたしを呼んだんじゃないんですか?」
わたしがそう言うと、土井先生はぱちぱちと瞬いた。
そして、かわいすぎる仕草(首を傾げる)をして口をひらいた。
「別に呼んではいないよ」
こんどはわたしが首を傾げた番だった。
…かわいすぎるわけじゃないけど。
「おかしいな…吉野先生が言っていたんですけれど」
「…?私のところに吉野先生は来てないよ」
え、とちいさく口から零れた。
わたしを呼んでいない土井先生。
さっき部屋で会った吉野先生は、嘘でもついたのだろうか?
でも、嘘をつく理由がない。
もしかして、わたしが聞き間違えたのだろうか。
「ああ、でもいいところに来た。今から煙硝倉に行って在庫確認を行うのだけれど、名前くん、手伝ってくれるかい?」
大丈夫、私だけだよ、といい、土井先生がわたしの頭を撫でる。
大きくて優しい手。
土井先生に、話すか話さないかを相談してみようか。
わたしは頷いて、「手伝います」と答えた。
悩む(8/16)
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