斉藤くんは似合うから、と言って梅色以外の髪紐も選んでくれた。
そして何も言わず買ってくれた。
15歳とは見えないそのスマートさに驚きそしてときめいたが、何度も経験しているんだと思うとなるほど納得だ。
「…あれ?」
斉藤くんが渡してくれた髪紐の中に、明らかに違うものが混じっていた。
白い巾着、……匂い袋だ!
爽やかな…清涼な香りが流れてくる。
「水仙の香りだよ」
「水仙…」
「名前ちゃん、山吹の匂い嗅いだ時ちょっとしかめっ面してたから…爽やかな匂いが好きかなあって」
名前ちゃんが見てない時こっそりと。
そう言って斉藤くんははにかんだ。
香りが風に乗る。
水仙の花って、こんなにいい匂いだったんだ…今まで嗅いだことなかった。
山吹もいい匂いだったけど、水仙のほうが好きだな。
「名前ちゃんの匂いとちょっと似てるよねぇ」
「え」
「今日は付き合ってくれてありがとう〜。それ、お礼だよ」
これがモテる男なんだと確信した。
水仙香(4/9)
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