※長文



私のクラスにはとても不思議な少女がいた。今日はそんな彼女のことを紹介しようと思っている。

彼女、そうだな、A子としよう。A子は一週間ほど前、私たちのクラス、2年A組にやってきた。私たちは、転校生の話をかねがね聞いていた。なんでもピンク色の髪、オッドアイの美少女だと。それで両親は日本出身というのが驚きだ。名前は、日本人らしからぬ、まさにカタカナで表記されるべき名前であった。最初私も笑ったものだ。けれど見てしまったのだから、仕方がない。

「よろしくお願いします!」


そう言って微笑んだA子はまさに噂通りだった。腰へ流れるピンク色の髪。金と銀のオッドアイ。そして、そうだな、これをなんと表すか、とりあえず、人とは思えぬ美貌を持っていた。まさしくアプロディーテーとでもいうか。性格は明るく、真面目。誰にでも優しく、分け隔てないという。私は華やかなA子には近づくことができないため、話したことはない。とりあえず、嫉妬に狂う女子が逆に彼女の虜になる、ということは知っていた。まさしく不思議である。A子の美貌は完璧なもので、出会ったすべての異性、または同性を虜にしていった。一日中告白を受けているような状態だった。私のクラスにも、いわゆるモテる奴というか、女子に人気高い男子が二名ほどいる。名を、山本、獄寺という。彼らは美形といわれる類で、常日頃、女子たちから熱いラブコールをもらっていた。けれども彼らは一度として女子と仲良く、交際をするような人柄ではなかった。特に獄寺のほうは。しかし驚くことに、二人は瞬時に惚れ込んだのだ。もちろんA子にだ。会えば好きだ付きあえだなんだの。驚きで笑いがでた。惚れ薬を飲んだ赤毛の少年のように、二人はメロメロだった。そんな彼らにA子は「私も好きだよ」などと笑いかける。これは、つまりそうなのだ。鈍感、天然というやつなのだ。私はすぐさまそれを見て、作っていると思った。が、彼らはなんとも言えぬ表情でそういう意味じゃ云々を語っていた。なるほどな、好かれる女というのは顔よし性格よし、鈍感天然等々…というステータスを持っているらしい。私にはとうてい無理だ、というより持ちたくない。

おお、ちょうどよく彼がきた。彼というのは、沢田だ。彼もまたA子に魅了された男の一人である。沢田は頬を赤くし、A子へと話かけている。これを初めて見たときは驚いたものだ。沢田は、笹川という女子に夢中であったのだ。並中のアイドルと呼ばれる笹川に、下着姿で告白したり先輩と争奪戦をしたりと大変なくらい好きであった。けれど今はなんだ。跡形もない。今じゃ並中のアイドルはA子だし、沢田の意中の女子はA子だ。私はそのとき、泣きそうになったのだ。私が沢田を好きとかそういうのではない。私が、A子に魅了されていないということにだ。
どんなに山本が好きでも、獄寺が好きでも、私の友達は、彼女だから仕方ない、私も彼女は好きだから。苛める奴は許さない!と言った。つまるところ、友人はA子に魅了されていたのだ。どうしてあんな女に、たぶらかさないで、と言っていた友達も、なんであんないい子を、と後悔し、謝罪していた。つまるところ、友人はA子に魅了されたのだ。
けれども私は、彼女を好きになることができない。かといって、嫌いにもなれない。私ひとりだけ、魅了されぬことに涙した。どうしてだろう。なぜ私は魅了されぬのだろう。ああほんとうにA子は不思議な少女だ。私のことを魅了してくれればいいのに。今の私には、あなたが残酷にしか見えない。…これ以上は悪口のようなものになってしまうので、紹介は終わりにする。さて訊こう、質問や意見は?



「君が魅了されないということに対してだけど」
「…」
「答えは簡単だよ」
「…?」
「僕と君が愛し合っているからだ。証拠に、僕は彼女に魅了されていない。逆に君に魅了されてる。ほら、簡単だろう?もちろん、これからも彼女に魅了される気はないよ」


今はただA子が愛しく、それを上回って雲雀が、愛しい。



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