年齢に合った恋愛をしなさい。大人の恋愛は禁止ですよと、山本シナ先生に言われたのはいつの日か。たぶんわたしが竹谷先輩とお付き合いを始めてからだったと思う。そのときのわたしはその言葉の意味がわからずただ頷くだけだった。年齢に合った恋愛、つまり年相応の恋愛。わたしにとって年相応の恋愛はなんだろう。きっと手を繋いで歩くとか頬への口づけとか、可愛らしいものだと思う。シナ先生の言う大人の恋愛は、


「なあ、」


はい先輩、と顔をそちらへ向ける。そちらとは、竹谷先輩のほう。わたし、先輩がいるのに違うこと考えて、最低だ。


「手ぇ繋いでいいか?」


なんだかとても真剣か顔をしている先輩。わあっ、いつにもまして素敵です。お部屋の中で手を繋ぐなんて不思議。差し出された大きな手を指先だけ掴む。だって、だってわたしには指を絡ませるようなことできないもの。触れた竹谷先輩の手が温かくて、わたしの頬も熱くなった。無意識に俯くわたしの顔を、先輩が顎をつかみ持ち上げる。まさか、とは思ったのだけれど重なったのはくちびるではなく、熱のこもった瞳だった。


「……名前…」


そう言って繋いだ手をひっぱった竹谷先輩はわたしの首筋に顔を寄せた。掠れた低い声に背中がぞくりとした。ふとおしりをなにかが滑りつま先まで痺れのような感覚がした。びっくりして声をあげれば竹谷先輩の唾を呑む音が聞こえた。なんだろうと思ってわたしと先輩のあいだに手を入れ体を離せば、真っ赤な顔をした竹谷先輩がそこに。先輩は辛そうに一度まぶたを閉じると、ごめんと呟いた。そしてわたしの上着の合わせへ手をかけ…あれ、あれ。


「兵助たちには抑えろって言われたけど、部屋で2人っきりになったら、」


シナ先生シナ先生、これは年齢に合ったことでしょうか。今の竹谷先輩は、すごく、とても息づかいが荒いのです。わたしを見る目がとても、熱っぽいのです。


「抑えるに抑えらんねえよ…」


わたしより大人な竹谷先輩、これは彼の年齢に合ったことなんだろう。ならばわたしの年齢に合っていなくても仕方ない。合わせを開く竹谷先輩に、わたしは小さく微笑んだ。




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