竹谷先生は正直、国語より体育のほうが似合っていると思う。
というより、パッと見が体育教師だ。
着ている服がジャージだし、…国語より体育のほうが好きだと自分で言っていた。
数学とかもあまり好きじゃないようだけど、活字は眠くなるんだって。
「――…『とっさに僕は鮎奈に叫んだ。』」
わたしも、竹谷先生を初めて見た時は体育の先生だと思ったもの。
でも竹谷先生は音読が凄く上手だから、そういうところは国語の先生に向いてるのかも。
先生は登場人物になりきるとか、そんな感じで読まない。
登場人物を自分…つまり主人公を竹谷先生自身にして読む。
そうすると読みやすいらしい。
でもそんな読み方のせいで、わたしみたいな子とか女の子が凄いときめいてしまうの。
だって主人公を自分として読むんだもの。
わたしには主人公が言った言葉が、竹谷先生が本心から言った言葉に聞こえてしまって、
「『君を、心から愛しているんだ!』」
……ほら、ね。
「…お?どうした、顔が赤いぞ?」
「何でもないです」
これだから、国語の授業は眠れないのだ。