あなたは私に「紫陽花みたいだ」と言ったけれど、私からしたらあなたは紫陽花の塊よ。
義丸は私にどういうつもりで言ったのかしら?
元気な女性?高慢?美しいが冷淡だ?無情?自慢家?冷たい?
どれでもいいですけどね、もし「移り気」や「浮気」なんていうつもりで言ったのなら許しませんよ。
私は今まで生きてきて、一度だって義丸以外の人を愛したことはないんですから。


「悪い、」

「その言葉を何度聞いたことですか。今度はどこのお嬢さん?」

「…」

「話せないのならいいわ。…約束通り、私と義丸の関係はこれっきり。もう復縁はいたしません」


名前、と呼ぶ声をつっぱねて義丸を家から追い出した。
しばらくして砂を踏む音が聞こえてくる。
そっと戸を開いて見れば、小さくなった義丸の背中。
もう、一生会うことはないでしょう。
こうやってあなたの背中を見たのは何回目?
いくら言っても直らない浮気癖に泣いた私、あなたにとって浮気はほんのちょっとの出来心よね。
いつもいつも復縁を頼みにきていたのは相手にされなかったからでしょう?
未練がましく義丸を想う私は、便利だったかしら?
我ながらいい代わりだったと思うわ。
でももう終わりなの、疲れたの。

ああ、そういえば紫陽花の花言葉には辛抱強い愛情っていうのがあった。
なるほど、私にぴったりね。
どんなに疲れたって、やっぱり私は義丸が愛しいのですから。



でも約束は約束。
もう絶対に復縁はできないわ。
私は明日からどっかの城の主に飼われるの。
この家も焼かれてしまうから、義丸に私の居場所を知ることはできないでしょう。
綺麗な私は今日でさようなら。
あなたは私を一度も抱かなかったけれど、あっちに行ったらもう、ね?
次こそどうか、彼女とお幸せに。
義丸、好きですよ、



かなしくちるは、
しちへんげ
のはな




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