私の友達の名前ちゃんは、同じ学年の久々知兵助とお付き合いをしている。
いつだったかなあ、…うーん、あ、そうだ!
私たちが三年生の時から二人は恋仲。
長いよねえ、とおせんべいを食べながら名前ちゃんに言えば「ふつうだよ」と頬を染めて笑った。
名前ちゃんはもちろんだけど、久々知兵助は見た目をブチ壊すくらい純情だった。
二人がお付き合いを始めて手を繋いだのは四年生の時。
口を吸ったのは、まさに最近だ。
大事にされているんだと思う。
誘惑したくのたまを、久々知兵助は無表情でつっぱねたのだもの。
名前ちゃんの時と違って、照れたりしないでね。
…なんで知ってるかって?
ふふ、
「名前、」
「あ、久々知くん」
名前ちゃんは未だに苗字呼び。
くのたまは苗字を明かせないけれど、きっと名前ちゃんの苗字を久々知兵助が知っていたなら、彼は間違いなく名前ちゃんを苗字で呼んでいるだろう。
今になっても、名前を呼ぶ時うっすらと頬が紅色だから。
名前ちゃんも名前ちゃんだよねえ、名前で呼んであげたら久々知兵助はどんなに喜ぶか。
「気にしないでいっておいで、名前ちゃん」
「…ん、ありがと、ごめんね」
きっと今から町にでも行くんだろう。
名前ちゃんがゆっくりと彼のもとへ向かい、はにかんだ。
久々知兵助もそれに答えるよう微笑む。
和ましい場面だけれど、二人の距離は近くもなく遠くもなく。
私といる時より、離れているのだ。
捉え方によっては、友達の距離。
「頬染め合って、かわいいけど…ちょっと見えないわ」
「なにが?」
「愛情」
隣にいた友達がやれやれと首を振った。
そんな彼女に笑いかけて「二人は愛し合ってるよ」と言う。
そうだけど、と返事が返ってきた。
なんだか腑に落ちない顔をしている。
私はゆっくりと口元を緩ませ、名前ちゃんと久々知兵助を見た。
あがりかけの口角が、ぐいっとあがる。
「私は見えないけど感じるよ」
積み重ねられた深い愛
あ、手繋いだ。
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久々知祭りその参