メールっていいものだと思う。
嘘付き放題ってみんなは言うけど、逆に本音付き放題じゃない。
たしかに顔は見れないし冷たい文字だけだけど、文字だからこそ書ける本当の言葉ってあると思うの。

好き、とか。

口に出す言葉ほどたしかなものじゃない。
でも、一言。
件名に何にも書かれていない、絵文字もデコレーションも付いてない、…つらつら書かれた長文でもない。
好きと、一言だけ、本文に綴られていたら。
そこから相手の想いが溢れでるのだ。
それが罰ゲームとかだったら、その人が最低なだけ。
携帯をゆっくりと閉じて、握りしめた。
何年も溜め込んだ想いを伝えるのは、すっきりしたけれど悲しい。
フられるフられないの話じゃなくって、私の喜怒哀楽が詰まった想いを0にするのは…悲しい。
思い出をなくす記憶喪失みたいに。

手の中にある携帯が緩く振動した。
サブディスプレイを見れば、竹谷八左ヱ門と映し出されていて。
へんじ、かな。
電話で?
メールで返事をもらえると思っていた。
竹谷くんのことだし、無視はないから…。
高鳴る心臓を抑えて、通話ボタンを押した。



「メール、さ、さんきゅ。嬉しかった」



「…うん」



「おれ、」



「……うん…」



「お、れも、好きっ、だ!」



耳を貫く大きな声。
それに小さく付け加えられた名前を聞いて、私は緊張していた頬が緩むのを感じた。
ぷるぷると震える唇。
携帯を握りしめると、涙が流れてきた。

コール3回で電話に出てくれ


電話もいいなあ、と竹谷くんの声を聞きながら思った。





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