これはつまり浮気現場というのか、いわないのか。
恋人の部屋へお饅頭を持って入ったらもうそこはいやんあはんな感じだった。
長次の上にまたがるくのたま。
……浮気現場か?
いやしかし、なあ…長次の顔が…。


「喜んでいただけて光栄です、長次先輩」


いや違うだろ。
お前長次のこと好きならそれくらい知ってろよ…。
長次の上にまたがるくのたまは、人の恋人を奪うと有名な後輩だ。
噂通りの美貌と髪。
…ハッ、ずいぶんと大きな胸でござんすね。


「先輩と一緒の時全然笑わないから、おかしいと思ってたんです」


顔に怒りマークを付けまくる長次を見て、ああ長次は優しいから女の子には手をあげられないんだなと思った。
でもそいつに優しくしなくていいと思うな。


「ああなんてかわいそうな長次先輩…」


ほんとうにな。
お前に迫られてかわいそうだよ。
というよりお前なんか劇でもやってんの?
その口調いらいらするんだけど。
呆れて何も言えない私に、どう勘違いしたのかわからないが後輩は勝ち誇ったような表情を見せた。
正直なところ、ああうんはいわかりましたという感じだ。
長次が笑うつまり怒っている時。
こういう時にすごく役立つということを初めて知った。
とりあえずこの馬鹿どうしよう。
長次はフヘヘフヘヘ言いながら拳を震わせている。

「…どれだけ頭にきてても女の子を殴らない長次が好きだよ」


「フヘ、……………………………名前」


「ち、長次先輩!?」


お饅頭を口に運ぶ。
立花がくれたお饅頭はいつも絶品だ。
美味しいなあとか思いながら、近づいてくる長次に微笑みかけた。
後輩は意味がわからないあんなに喜んでいたじゃないイヤッって顔をしている。
指差して笑いたい。
長次は隣までくると、優しく私の肩を抱いて耳に口を寄せてきた。
小さな声で呟く。


「俺も、…俺のことを深く信じてくれている名前が好きだ」


ざまあみろばあか!
人の恋路邪魔するからだばあか!
んべ、と舌を出して後輩を睨む。
いまだに意味がわかっていない馬鹿を置き去りに、私たちは仲良くくのたま長屋へと向かったのだった。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -