ひゅんひゅんと滝夜叉丸の指で回る戦輪の輪子ちゃん。
私はこの輪子ちゃんによって、頬を盛大に切ってしまったのだ。
「申し訳、ない」
目の前で頭を下げる滝夜叉丸。
私はびっくりして、いつもの滝夜叉丸と違う姿に、少し、すこーし引いてしまった。
「な、なに…どうした滝夜叉丸」
「…私のミスで、おまえの顔に、」
顔を上げた滝夜叉丸は、いつもと違う顔だった。
眉はさがり、大きな目は不安に揺れている。いつも自慢してくる髪は、へにょへにょだ。
「傷を、つけて……」
た、滝夜叉丸がおかしい。
かわいいけれど、あの滝夜叉丸に慣れてる私からすれば気持ち悪いに等しい。
ぞわぞわっと鳥肌が立った。
「き、気にしないでよ滝夜叉丸…。元々、実習訓練で傷だらけだったんだからさ」
ばしばしと滝夜叉丸の背中を叩いた。
それでも、しゅんとした表情。
………。
「…滝夜叉丸」
「なんだ?」
「許さない」
「っ!」
顔を真っ青にし、私を見上げた滝夜叉丸のおでこを、ばちんと指で弾く。
あのぷにぷにしたすべすべの頬に、唇を落として。
「いつもの滝夜叉丸に戻ったら許してあげるよ。…私は、あの滝夜叉丸が好き」
私の言葉を理解していないのか、しばらく首を傾げていた。
けれど、顔を一気に真っ赤に染め上げ、滝夜叉丸はしゅばっと立ち上がった。
あぶな、倒れるところだった。
「はーっはっは!そうだろう、そうだろう!」
どこからか取り出した輪子ちゃんを、ひゅんひゅんと回し始める。
その顔は、いつもの凛々しい滝夜叉丸のものだ。
…赤いけど。
「やはりおまえは私をよくわかっている!そんなおまえが私は好きだ!」
はーっはっは!そう言って笑う滝夜叉丸に、今度は私が赤面した。
そ、そんな大きな声で言わないでよ!