学園への帰りみち、ふと足元に視線を落としてみればかわいらしい花が咲いていた。かわいい。
桃色と白色を散りばめたその花は鳥に似た名前を付けられている。
「孔雀草…」
しゃがみこんで花弁に触れた。ちなみに僕が触ったのは桃色の孔雀草。
白い孔雀草は白孔雀と呼ばれていてこちらもかわいらしい。
そういえば昔、花に興味があり花図鑑を買ったことがある。今は僕の部屋のどこかに埋もれているけれど。あとで探してみようかな。
孔雀草の花言葉は、一目惚れ。
…ほかにもあったのだろうが、思いだすことができない。
「…ひとめぼれの花か」
一目惚れなんて今よりもずっと前にして、…まあ今はもう実っているんだけれど。
この花をひとつ持ち帰り彼女に渡したら喜んでくれるかな。
…花言葉なんて知らないだろう。
僕は孔雀草の茎に指を伸ばし一輪、手に取った。
その数時間後、学園に戻った僕は彼女に孔雀草を渡す。
一度きょとんとした彼女がかわいくて、抱き締めたい衝動にかられた。
「ありがとう、いさく」
「…え、」
いつもなら呼ばないのに名前を呼ばれ硬直した。だって、こんなにもときめいたのは初めてだったから。
孔雀草より濃い桃色を頬に撒き散らした彼女は文句なしにかわいかった。