「ええ?先輩があんまり口吸いしてくれない?…それあんた愛されてないのよ!私の友達も、三年の誰かと恋仲らしいけど、毎日口吸いしかしてないってよ?」


という友人との会話を、偶然通りかかった先輩に聞かれてしまった。
数馬先輩はにこにこ笑いながら、「ちょっと、ごめんね」なんて言うなりわたしの腕を掴みすごい速さで走りだした。
こういうとき、不運な出来事が起きないのだから本当に不運なのか疑わしい。

これが数分前の出来事で、数分後の出来事はこれからだ。
先輩は自室でわたしと向かい合って座ると、威圧感のある笑顔で首を傾げた。


「どういうこと?」
「…えっと、」
「何の話か、詳しくお願いしたいな」


がしっとわたしの肩を掴み、顔を近づけてきた先輩が目をかっぴらく。
恐ろしいその顔に口元を震わせながら、ゆっくりと友人としていた話を話し始めた。

数馬先輩はあんまり口吸いしてくれないんだ。大事にしてくれているのかもしれない、けど、やっぱり恋人としては、手を繋ぐだけじゃ物足りないよ。……恥ずかしいけど、本音を言えばね………してほしい、な。

数馬先輩がゆっくりと俯いていく。
それを見て、わたしは死んだと思った。
大事にしてくれているのに、大切にしてくれているのに。
話した途端、自分が酷く愚かに思えた。
なんて浅はかな考えだろう。

すみませんと精一杯声を出し体を引く。
けれどそれは、数馬先輩の手に寄って阻止された。


「せんぱ、」
「…していいの?ねえ、どれくらいしていいの?何回してほしいの?僕が満足するまでし続けても、君は構わないの?」


息継ぎもなしに叫んだ先輩が、わたしの後頭部を鷲掴んだ。
離した体を、再び引き寄せられる。
驚きでぴくりとも動かないわたしの唇に、数馬先輩が噛みついた。
まるで味わって食しているかのように執着に重なり合う唇。
息が、声が、ぐるぐると考えが回るわたしに、唇を離した先輩が額をくっつけて呟いた。


「…僕は、量より質派なんだ。沢山するより、一回二回を…深くじっくりと」




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