電車の揺れは眠気を誘うものだと友人に聞いたことがある。
カタンカタンと揺れる電車、疲れを感じている人間には激しい睡魔に襲われ、悪魔のような存在なのだろう。

他の学校に比べ部活より委員会活動が活発な私の学校。
それも普通の委員会ではなく、精神的に参ってしまう委員会ばかりなのである。
活動が委員会に合っていないのだ。
たとえば体育委員会ならば学校を走り回り陸上部の邪魔する上バレーボールをぶち壊す。
たとえば保健委員会ならば意味もなく毒物を作り上げ人を巻き込み殺人未遂を起こす。
たとえば…と例を挙げれば切りがないのだけれど、普通行わないようなことばかりがしているのだ。
私はその中で生物委員会に所属しているが、


「…あっ、ごめん」
「構わん」


船を漕いでいた頭がぽてりと、左に座る潮江くんの肩に乗った。
急いで謝ると、潮江くんは少し怖い顔で首を振った。
委員会に入ってからというもの、帰りの電車ではいつもこんな感じだ。
恋人の潮江くんは委員長をやっているくせして、電車で寝たことがない。
私は何度か眠ってしまい、降りる駅で潮江くんに起こしてもらっている、


「…あっ、ごめん」
「構わん」


また頭が潮江くんの肩に乗った。
私の頭は、潮江くんの肩が大好きなようだ。
潮江くんは私を見ずに首を振った。
……少し寂しい。

私たちは恋人、でも周りからはそう見えないらしい。
一緒に登下校、しかもその時にしか話さないし会ったりしない。
まあ、それだけでも私は満足なんだけれど。

そんなことを考えていたら、また首がかくんと俯き始めた。次は潮江くんに寄りかからない、と体を少し右に傾けた。
すると、案外近くに座っていたのか右にいた兄さんの肩にぶつかってしまった。


「す、すみません」
「いいえ」


……見ず知らずの人に寄りかかってしまった。
しかも男性。
恥ずかしさに頬を熱くし俯くと、おいと潮江くんに小さく声をかけられた。


「そんなに眠いか?」
「う、うん。ごめん頑張って起きてるから」
「別に寝るなとは言ってないだろ」


眉を寄せた潮江くんが私を睨んできた。
じっと私を見る潮江くんがすごくかっこよくて焦る。
視線を漂わせどもりながら、じゃあ寝ると言った私はなんて間抜けだったのだろうか。
鞄を抱きしめて、俯く。
どちらにも傾かない私なりの努力だ。

けれど潮江くんに、それをばらばらに崩されてしまった。


「またあっちに傾かれても困るからな」


頬を赤くして私の腕を引っ張った潮江くんの破壊力は、ハンパなかった。



醒覚
(眠気が吹っ飛び、睡魔も消えた)





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