ぱっと目に広がる黄緑色にびっくりして、少し息ができなかった。名前、と名前を切なそうに呼ばれて胸がちょっぴりちくりとする。年齢のわりに逞しい腕がわたしの背中に回されていて、それがわたしを強く抱きしめていた。
「ごめん、おれ、もう迷子になったりしないから」
ほんとう?
呂律の回らない口調で訊ねれば、ちゅうと頬に接吻を落とされた。一気に頬が熱くなる。ただでさえ接吻は慣れていないのにふいうちなんて。
「本当は学園が逃げてくんだけど、頑張って追いつくから」
わたしの髪に指を通していく。決してわたしの髪がさらさらなわけではないけれど、指はさらさらと髪をすり抜けた。
「作兵衛に頼んで縄を結んでもらうから」
「左門には絶対着いていかないから」
ぎゅっと眉根が寄せられ、苦しそうに歪められた顔。どうしてそんなに辛そうなの。わたしあなたが迷子になったことそんなに気にしてないよ。
「だから、泣かないで名前」
頬に触れた三之助の唇が、いつも以上に熱いのは涙のせいだったんだ。