最近、恋人が私に冷たい態度をとるのですが、どう思いますか。


「え?う、うーん」


眉をへの字に曲げて勘右衛門が笑った。
同じ組の彼だから、少し期待していたのだけど、


「私、久々知くんに嫌われちゃったのかな……」
「そ、それは絶対ないって!」


うっすらと浮かぶ涙を指で拭うと、勘右衛門が慌てたように首を振った。


「あの兵助が嫌うはずないよ。べた惚れだもの」
「勘右衛門…」


にっこりと笑って私の頭を撫でる勘右衛門。
その優しさに心をじーんとさせながら、私は久々知くんを思い浮かべた。
きりっとした表情を崩して私に微笑む姿、さりげない気遣いと優しさ。
はにかみながら私に好きと言う久々知くん。


「………久々知くん…」


思い浮かべれば浮かぶほど、久々知くんの最近の態度がとても冷たくて、悲しくて、再び涙がでてきた。
嫌われたなら仕方ないけど、無視…避けられたのは、ちょっと、かなり辛い…。
勘右衛門の手が回ってきて、私の背中をぽんぽんと叩いた。


「泣かな「勘右衛門、ちょっとい…」…兵助、」


かたりと障子がひらかれて、音もなく現れたのは、誰でもない私の恋人久々知くん。
久々知くんは私と勘右衛門の顔を交互に見たあと、眉間に皺を寄せて呟いた。


「………すまない」


くるりと背中を向けて去ろうとする久々知くん。
いま、ここで行かせてしまったら、だめ。
もつれる足を解いて、久々知くんの元へと走った。

「く、久々知くんっ」


私の呼びかけに久々知くんは振り返ってはくれない、でも立ち止まってくれた。
それだけでも、…嬉しくて。
急いで駆け寄り、私は久々知くんの背中におでこを付けた。
口を開いてから、言う言葉が見つからなくて泣きそうになった。
ぎゅっと目を瞑り久々知くんの装束を掴む。


「久々知くん、久々知くん、久々知くん、」
「……、」
「私が悪いならちゃんと謝るから、恐い顔しないで、避けないで、目を見て話して、抱きしめて、…好きって言って…」
「…、」
「嫌いになったなら、はっきり言って…」


ぽたりと手の甲に涙が落ちた。
ぐずぐずと洟をすする音が響く。


「……………名前、」


そっとからだを離され、優しく抱きしめられた。
おどろきで涙も止まり、ゆっくりと顔を上げる。
そこには、頬を紅色に染めた久々知くんがいた。
久々知くんは私と目を合わせると、ふわりと微笑んだ。


「……好きだよ」


まぶたに静かに唇を落とした久々知くんが、一層強く私を抱きしめた。
私は嬉しさに涙を流し久々知くんを強く抱きしめ返した。





「勘右衛門に、妬いただけ。いくら幼なじみでもべたべたしすぎだろう。名前呼びも、むかつく」


「だからって6回も同じ喧嘩しないでくれよ!」
「…そうだっけ?」




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