わたしにはとても綺麗な顔の兄がいます。双子とは思えないほどわたしと異なった顔立ちの兄は、とても綺麗でした。一方わたしの容姿はというと、普通で平凡で、よく見かける容姿でした。ただ双子ですから、大きな目(兄のように綺麗ではありませんでした)と、茶色の癖毛(兄のように綺麗ではありませんでした)は、おんなじものでした。兄は四年生のにんたまとしては背が低く、体つきも、わたしほどではありませんけれど丸く、容姿だけを見たらそれはそれは女の子に見えてしまいます。兄を男とは知らず、告白しにきた男がいるほどでした。そんな美しい外見で目立つ兄ですから、当然妹のわたしも目立ってしまいます。わたしの顔を拝みにくるひとさえいます。けれど、決まって、ああと、わたしを見て落胆するのでした。最近は、慣れました。最近は、笑顔を浮かべられるようになりました。最近は、同意できるようになりました。けれど心のなかでは嘲笑を浮かべていたのです。自分に、彼らに。綾部の妹はこんなもんかと呟かれたこともありました。兄が美しいと妹がこれかと囁かれたこともありました。兄とは違い無表情に生まれなかったわたしは、へらへらと笑いその場を去ります。けれど後で、静かに、静かに泣くのでした。そんなわたしを兄はいつも優しく抱きしめてくださいます。そしてわたしの涙を拭うと、いつも唇を重ねてくださいます。「誰がなんと言ってもおまえはぼくの妹だ。誰よりも愛しく恋しい存在だよ」いつしかわたしたちは体を重ねるようになりました。「名前は誰よりも、ぼくよりも、綺麗だ」そうして兄とわたしは犯罪者になりました。



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