小説 | ナノ







*流血表現あり



『そん…な…』

名前の口の端から垂れる赤い筋。

僕の指からは僕自身で切り付けた事により、流れ出る血液。

遂に、彼女に僕の血液を飲ませる事に成功した。


初めて出逢ってから、僕の心は彼女で一杯。
僕は彼女に、餌を供給する存在以上の想いを抱いていた。

まるで太陽のような彼女。
僕にとっては太陽は忌ま忌ましいものでしかなかったけれど、彼女が太陽だと思うと、少しは太陽を希望と信ずる普通の人類の考えも理解出来た。

だから、傍に置きたい。

愛しいと思うものは、傍に置きたい。
そう思う事は当然の事じゃないか。

でも彼女は人間、僕は吸血鬼。
本来は越えられない種族の壁。

でも一つだけ、方法がある。

彼女を吸血鬼にすれば良い。

方法は簡単。
彼女に僕の血を飲ませるだけ。

そして今まさに僕の願いは叶った。

健康的だった肌は青白く、犬歯はさらに鋭く。

『私…もう太陽見れないの…?』

絶望に染まる瞳。
本当はこんな瞳見たい訳じゃないけれど、彼女の見せる表情なら全て見たいと思っている。

「君が僕の太陽さ…眩し過ぎる程、ね」
『私は太陽じゃないわ…』
「卑下しなくたって良いよ…

じゃあ、君の血を貰おうか」

名前の首にかぶり付き、血を吸う。

この上ないくらい極上の甘美な味。

牙を外せば、彼女の首筋の傷は直ぐに塞がれていく。

名前も己の変化に気が付いたらしい。

『…もう人じゃないのね、私…』
「人じゃなくたって、僕がいるじゃないか」

僕だけじゃない、クローマ達だっている。
彼らに名前を渡すつもりなんて毛頭ないけどね。

絶望から、何かへ変わりつつある彼女の瞳。

彼女の口の端から未だに垂れる赤い僕の愛の証。

こうなる事は、最早運命(ディスティニー)なんだ。

「愛してるよ…名前」

全てに満足して、月明かりの降り注ぐ中、僕は彼女の唇へ口づけた。


正真正銘僕の







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