小説 | ナノ







※若干暗い











ねぇ、どうして?

「……っ」

何で、白竜が泣いてるの?


目の前にいる白竜は
その赤い瞳から涙を溢している

やめてよ、似合わない
君はいつも自信に満ち溢れている筈でしょ?
涙なんか、似合わない

「やめてよ」

「無理……だ、とま…ら、なっ」

「どうして泣いてるのさ」


涙を流し続ける白竜に
僕は不思議な目を向ける

白竜は手を伸ばし、僕に触れ
そのまま抱き締めた

「だって、お前が、泣かな、いから」

「……泣けないよ」

「何でだ、シュウは、泣いていい筈……」

「僕は泣けないの」


ついさっき、妹の事を話した
それを涙を一筋も流さず僕は話した

泣けない
悲しみが強すぎるのもあるけど


だって、僕は
本当はこの世に存在してない筈だから



僕が亡霊なのを
白竜はまだ知らない

「どう、して……泣けない、の、だ」

「どうしてって……それは」


一拍置き
僕は白竜を自分の体から離す

驚く白竜から距離を離すと
僕は少し笑って言った

「生きてないから」

「何を……」

「僕は、この島だけに実体を持つ亡霊だから」


だから泣けない
泣こうと思っても、涙を流すことは不可能
白竜は目を見開いて驚いてる
怖い、のかな
信じられないのかな…

どちらにしろ
多分、僕は白竜とはもう…


「じゃあ…」

「待て!」

立ち去ろうとすると
呼び止められた

後ろを振り返ると、白竜は僕にこう告げる

「お前が、シュウが泣けないのなら、俺が代わりに泣いてやる」

「は…?」

「だから」

また、白竜が僕を抱き締め
今度は、きつく抱き寄せられる

「俺から離れないで欲しい」

「白、竜…」


泣きそうになっても
僕は泣けない
今もだ

でも、さっきの言葉通り
僕の代わりに、白竜が泣いていた













……涙を流せない僕のために
(君が代わりに涙を流してくれるんだね)





 







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