オレはランボを連れて歩いていた。

理由はランボがリボーンを狙って返り討ちにあって…そのあとはお約束。

母さんは仲裁してやれって言うけど、そんなの簡単には出来ない。

結局、泣いてるランボをオレが連れ出すことになった。

ランボを連れて歩くのは楽じゃない。

すぐに何かを見つけては何処かへ行ってしまう。

今はオレが買ってやったお菓子を食べながら大人しくしているが、またいつ走り出すか分からない。

「あっ、銀也だ!」

突然ランボがそう言い、走り出した。

「え、待てランボ!」

オレは油断していたのでランボの手を離してしまい、慌てて追いかけた。

たどり着いたところには雲雀さん…銀さんがいた。

オレは正直この人のことがよく分からない。

名字がヒバリで風紀委員だし、最初は怖い人なのかと思っていた。

でも話してみると、いっつも気だるそうにしていて、ヒバリさん(恭弥さんのほう)みたいに怖いわけじゃなかった。

でも、戦うとやっぱり強い。

風紀委員長に並ぶ強さらしい。

「おーツナじゃねぇか、どうした?」

いきなりランボに突進されて、銀さんは少し驚いた様子だったけど、オレを見るとそう言った。

オレは経緯を放した。

「目に浮かぶな、それ。」

そう言って笑う銀さんは、とてもあの最凶の風紀委員長の従兄弟だとは思えない。




銀さんは、甘味を買いに行くところだったらしい。

とにかく銀さんは甘いものが大好きで、確かに会うたびにガムやら飴やらを持っている。

この前もランボに飴をくれた。

ランボに対する銀さんの態度は優しくて、それでランボは銀さんに懐いているようだ。

「あの、今日はヒバリさんは?」

そう訊くと銀さんは一瞬きょとんとしてから

「恭弥のこと?」

と言った。

「あ、そうです。」

オレは言った。

確かに銀さんもヒバリだった。

最初はオレ達はみんな、銀さんのこともヒバリと読んでいたけど、いつの間にか名前や愛称で呼ぶようになっていた。

獄寺くんはまだヒバリって呼んでいるけど。

「恭弥なら群れを潰しに言った。」

「…そうですか。銀さんは行かないんですか?」

「うーん、面倒くさいし行かない。」

銀さんはそう言った。

この人は戦うのが好きじゃないのかな?

「銀さんは嫌いなんですか?戦うの。」

オレは訊いてみた。

「別に嫌いじゃないよ?」

そうなんだ。

「お前はどうなの、綱吉くん?」

「え?」

急に訊かれて戸惑った。

「だってボンゴレの次期ボスなんだろ?」

「し、信じてるんですか!?」

思わずそう言った。

だって銀さんは、最初にリボーンが誘ったときにもマフィアごっこだと思っているみたいだったし、こういうのは信じなさそうだと思っていたのに。

「嘘なの?」

「えっと、嘘では…」

真顔で嘘かなんて訊かれたら、嘘とは言えなくて。

「大丈夫。お前は守るために戦うんだろ?俺も昔そうだったんだ。」

困っているオレの頭に手をのせて銀さんは、そう言って笑った。

「…昔?」

「そ、昔。お前らには教えてやんねーけど。」

銀さんはそう言ってにやりと笑った。


 

「ぎーんちゃーん!」

そんな声がして振り返ると、ちょうど誰かが銀さんの背に飛びついてきた。

「おわっ」

そう言って銀さんは前に倒れた。

「き、君は…」

銀さんに飛びついてきたのは、六道骸の仲間、神楽だった。

この子とは、霧の守護者戦の日に他の黒曜メンバーとクロームと一緒に再会した。

「なんだお前かヨ、沢田綱吉。」

神楽は言った。

「神楽、退いてくれー。」

苦しそうな声に下を見ると、神楽が背中に乗った状態で銀さんはうつぶせに倒れていた。

「なにヨ、銀ちゃんは軟弱アルな。」

そう言って神楽は銀さんから退いた。

「お前と一緒にすんな。」

そう言って銀さんは立ち上がった。

神楽は人並み外れた身体能力を持っているらしい。

それは、骸が憑依弾を使ったときに、神楽が近くにいないことを嘆いていて知った。

神楽は立ち上がった銀さんの腕にしがみついた。

まるで彼女が彼氏にするように。

まだ数回しか会ったことがない筈なのに、この2人は仲が良い。

あのとき、気絶した神楽と怪我をした銀さんをおいて先に進んだけど、あのあと何があったのかは分からない。

でも、霧の守護者戦のときには既に2人はこんな感じだった。

いつも執拗に銀さんにくっついている神楽と、それにされるがままの銀さん。

これはちょっと謎だ。

 


「で、神楽?なにしてんの?」

銀さんが問う。

「酢こんぶ買おうと思ったけど、お金ないアル。銀ちゃん買ってヨ。」

神楽が言った。

「嫌だね。この金は俺の甘味代なの。」

「ケチ。」

「何だとこの酢こんぶ娘。」

「あ、じゃあオレ達はこれで…」

口論が始まりかけたから、オレはそう言ってその場を離れようとした、その時、

ドンっと音がして銀さんに誰かがぶつかった。

そいつはそのまま走り去る。

「あっ財布!」

その声に振り返ると、銀さんがズボンのポケットを探っていた。

「あの野郎おぉっ俺の甘味代を!オイ神楽行けっ酢こんぶ買ってやるからっ」

銀さんがそう叫ぶと、

「まじでか、よっしゃ任せるヨロシ!!」

神楽もそう言って走り出した。

続いて銀さんも走り出す。

俺も何となくついて行った。

「ほちゃあァァ!!」

神楽は物凄いスピードで引ったくりに追いつくと持っている傘で思いっきり殴った。

そして倒れた引ったくりに銀さんは歩み寄った。

「おいテメー、これは俺が雲雀銀也と知っての狼藉かぁ?俺の甘味代を奪おうとはいい度胸じゃねーか。」

そう言って引ったくりに詰め寄る銀さんは、凄く悪役顔だった。

ちなみに、雲雀の名前が出たところで引ったくりの顔色が変わった。

その後、その引ったくりは銀さんの木刀の餌食になったあと、神楽に引きずられて行った。

俺はそれを見届けてからランボを連れて家路についた。

帰ってからまたランボがリボーンに勝負を挑んで負けたのは、別の話。

銀さんは甘味が絡むと恐ろしいということが改めて分かった日だった。


 
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