リング争奪戦の開始が宣言されてからすぐ、朝学校に行くと大怪我で包帯とか巻いてる了平がいた。
知らなければ気付かないように色々と手を回されているが、やはり争奪戦は始まってる。
俺には関係ないね。
観戦に行くのも面倒くせーし。
まあ?恭弥に免じて雲戦くらいは見に行こうかなと思ってる。
恭弥もディーノと修行?してるし、本当はサボり放題なんだが、真面目に教室にやって来てる俺はえらい。
まあ了平の怪我も酷くないと言えば嘘になるが、生きてるし俺が知ってるリボーンと展開は一緒のようだ。
だからこそ、俺は安心して争奪戦の間も家で寝ているわけだが。
リング争奪戦が始まって変わったことと言えば、恭弥の修行を草壁と一緒に見ているときにロマーリオのおっさんに声をかけられてたまに一緒に飲むようになったこと。
俺が今何歳かは気にしたら負けです。
そうやって変わらずだらだらと過ごしていた俺に訪れたいつもと違うこと。
その日は確か雨戦が終わったところで、今夜は霧戦、という日だった。
俺は恭弥のに言われて並盛の風紀を守るべく、そこいらを適当にぶらついていた。
なんか忘れている、そんな気がして、考え事をしながら歩いていたのが悪かったのか。
俺としたことが、自分の背後にものすごいスピードで近付く人物に気付かなかった。
「ぎーんちゃーんっ!」
「ぐふぅっ」
いきなりの背中への衝撃に思わず変な声が出た。
そして、さっきまでなにか忘れていると思っていたことを思い出した。
「そっか、黒曜が来るならコイツも来るのか…」
そう呟いて、自分の背にしがみついている人間を見ると、案の定、満面の笑みの神楽だった。
「銀ちゃん、久しぶりアル!」
神楽が言った。
「おーう、脱獄お疲れさん。」
俺がそう返すと、神楽に殴られた。
「骸は逃げられなかったネ!出てきたのは私らだけアル。」
そう言って神楽はうつむいてしまった。
そういやコイツはジャンプ読んでなかったのか。
「平気だって。骸もそのうち出られるって。」
そう言うと、神楽は少し安心した顔で俺を見た。
「本当アルか?」
「本当だ。ま、いつかは分からねえけどな。」
「…まあ信じてやらなくもないアル。」
そう言って神楽は大人しくなった。
そろそろ背中の神楽が重い。
前と身長差も年齢差も減ったんだからな。
そう言うとまた殴られた。
「もう、乙女に何を言うアルかこのマダオが。」
そう吐き捨てた神楽は、実は他のメンバーには黙って俺のとこへやって来たらしく、また慌ただしく走り去って行った。
「今晩絶対来いヨー。」
という台詞を残して。