黒曜の騒動があってから少し経ったある日。
俺が学校から家への帰り道を歩いていると、どこかから子供の泣き声がした。
辺りを見回すと、モジャモジャの牛が泣いていた。
なんか汚れてるし。
がまん〜なんて言ってるけど我慢出来てないし。
そう言えばまだランボと絡んだことなかったな。
なんでこんなとこにいるんだ?
沢田家はこの辺りじゃないはず。
リボーンにどつかれたか?
どうしよう?よし無視しよう。
そう思って歩き出した俺だが、不意に服の裾あたりが引っ張られたような気がして下を見る。
気がして、じゃなかった。
正真正銘アホ牛が俺のズボンを掴んでいやがる。
「ちょっ、何すんの。」
さすがに蹴飛ばす訳にもいかず、取り敢えず訊いた。
「おれっちはランボさんだよ。別にリボーンにやられたんじゃないもんね!」
何もそんなことは聞いてないのに白状してくれた。
しかも俺の読みはアタリだった。
ランボは一向に俺から離れる気配が無く、泣き止んではいたが煤と涙で汚れて同情を誘う見た目だった。
「はぁ」
俺はしゃがみこんで目線をあわせポケットの中身を見せて言った。
「これあげようか?」
ランボの顔が明るくなる。
そう。俺が見せたのは飴玉。
残念ながらブドウじゃなくてイチゴ味だけど。
俺は糖分は切らさないので、大体いつも何かを持っている。
「も、もらってあげてもいいよ。」
ランボが言う。
「えー?欲しかったらあげようと思ったけど、仕方なくもらって頂かなくても良いよ?」
あえて分かってて言ってみる。
「嘘だもんね!飴玉ちょーだい!」
ちょっと慌てた様子で叫ぶランボに飴玉を渡す。
ランボはすぐに包みを開け、中身を口に入れた。
その時、遠くでランボの名を呼ぶ声がした。
「ツナだ!」
ランボが言う。
暫くしてツナがこちらへ走ってきた。
「ぎ、銀さん!すいません!」
ツナが慌てた様子で言った。
「いーから、気にすんな。」
「すいません。ほらランボ、帰ろ?」
ツナが言うと、ランボは俺から手を離しツナの方へ歩く。
その時、
「おう、久しぶりじゃねーか、銀。」
リボーンが現れた。
「おー」
適当に返事をしたとき、
「ガハハハ!死ね、リボーン!」
さっきまで大人しくなっていたランボが手榴弾?を取りだし、リボーンの方へ走っていく。
「てめえが死ね。」
リボーンはボソッと言って、棒状のものに変形したレオンでランボの頬を殴る。
ああ、こういうのも沢田家では日常なのか。
そう思うとツナに心底同情する。
リボーンに殴られ、吹き飛んだ拍子に飴が口からポロっと落ちた。
「飴〜」
ランボはまた泣き出す。
そして、モジャモジャ頭からあのバズーカを取りだし、自分に向けた。
ドンッ
辺りが煙に包まれる。
「…やれやれ。」
姿を現したのは、黒髪パーマの牛柄のシャツの男=ランボ。
5歳+10歳で15歳。にしては大人びた外見をしている。
年齢的には今の俺とそう変わらない筈だ。
「こんにちは、若きボンゴレ。」
ツナの方を見て言う。
そして、こちらに気付き、
「お久し振りです、銀也さん。」
と言った。
「…おお。」
俺は言った。
「あ、今ランボが撃ったのは10年バズーカといって、撃たれたら10年後の自分と5分間入れ替わるんです。」
慌ててツナが説明した。
「へえ、じゃあこいつは10年のランボなのか?」
とりあえず俺はそう言った。
「あまり驚いてないですね、銀さん。」
「い、いや、びっくりしたよ?」
「銀也さんは昔から驚くときと驚かないときの差が激しいですからね。」
ランボが言う。
きっと驚かないときは元々知ってる事だったんだろう。
「そういや10年後に銀はいねえのか?」
リボーンが問う。
確かにランボは「久しぶり」と言った。
「いいえ、いますよ。」
「じゃあなんで久しぶりなんだ?」
リボーンが言った。
それは俺もちょっと気になる。
「近くに居ないってことです。いずれ分かります。未来のことをペラペラ喋るなとボスに言われているので。」
ランボは言った。
そこでボンっと音がして煙とともに現在のランボが現れた。
「うわあぁぁぁ!」
まだ泣いてる。
5分間ずっと泣いてたのか、こいつ。
しゃくりあげているランボの前にしゃがみ、もう一度飴をやる。
「あ、ありがとうございます銀さん。」
「どーいたしまして。銀さんが他人に糖分を譲るなんてなかなかレアなんだ、大切に食え。」
俺はランボに言った。
ランボはこくんと頷く。
「甘やかすな。」
リボーンが言う。
こいつはランボに対して厳しい。
その後、俺たちはそれぞれ帰路についた。
ランボ&10年後ランボとの対面は、少しばかりの謎というか疑問が生まれた。
10年後の俺はいったいどこで何をしているのだろうか?という疑問が。