応接室の騒動から数日後。
昼休み、俺は屋上で寝ていた。
恭弥は風紀委員長の仕事をしていて、そのまま応接室にいたら手伝わされそうだったので、避難してきたわけだ。
何やら騒がしくなって、下の方を見ると綱吉くんが3年生に絡まれている。
綱吉くんはいっつも厄介ごとに巻き込まれるよね。
しかも、今日は野球バカも爆弾野郎も一緒じゃないみたい。
「しょうがないか…」
俺はため息とともに立ち上がった。
厄介ごとに首を突っ込むこの癖は、どうやら転生したあとも変わらないらしい。
おかげで色々と結果的には不良を、恭弥の言う"咬み殺す"ことになって、俺は風紀委員会の強さでいうNo.2になってしまった。
ちなみに地位的なNo.2は副委員長の草壁哲矢だ。
まぁ、今ならあの家庭教師も居ないようだし、目をつけられることもないだろう。
下へ降りると、綱吉君はまさに殴られようとしていた。
どうやら、奴等にぶつかっただけらしい。
とりあえず、腰のベルトのとこにさしていた木刀を抜いて奴等と綱吉くんの間に入る。
「なっなんだお前!?風紀委員か!!?」
不良が叫ぶ。
「えっ!!?」
と綱吉くん。
「オイオイ、お前らなに群れて弱い者苛めしてんの?咬み殺すぞ、コノヤロー。」
「かっ咬み殺す!?」
綱吉くんが言う。
恭弥の近くに居すぎて"咬み殺す"がうつったんだよ。
それに、怖い奴を演じた方が助けを求められるような面倒ごとはないし。
ガッ
一撃、不良がふき飛ぶ。
「はいィ次ィィ!」
他の奴も一撃ずつで倒していく。
所詮はそのへんの雑魚、すぐに片付いた。
木刀を血を払うようにふる。
血はついてないけど。
そして綱吉くんの方を振り返る。
「ひぃっすいませんっ。」
綱吉くんはものっそい怯えてる。
まぁ、恭弥ならやられてる方も咬み殺すし。
「あー、そんな怯えんなよ。俺はお前までどうにかしようとは思っちゃいねぇよ。…ケガしてねぇ?」
とりあえず訊いてみた。
「え?…はい、あ、ありがとうございます。」
そう言いながら、いつの間にか尻餅をついていた綱吉くんは立ち上がった。
そのとき、
「10代目〜!」
爆弾少年が走ってくる。
あ、やべぇよ。
「すいません、遅くなってしまいました。」
そう言って獄寺は此方に気付く。
「あ?んだてめーは?10代目に何しやがった!?」
ええ!!?
こいつの頭ん中どーなってんの?
何でそーなんだよ。
「えーと、何もしてないよ?」
「そ、そーだよ獄寺君。この人は不良から俺を助けてくれたんだ。」
綱吉くんも足元に転がってる奴等を指差して言う。
「え、そーなんすか?」
「そうだぞ。」
え?
今の誰の声?
「リボーン!?学校来るなって言ったろ?」
マジでか。
居ないと思ってたのに。
「おめーこの前応接室にいた奴だろ?」
とリボーン。
「あっそういえばっ。」
今気付いたの?
「そうだけど?」
「おめー強ぇな。」
「そりゃどうも。」
「おめーヒバリと仲良さそうだったな?ヒバリと会話成立してただろ?」
「まあね。恭弥とは従兄弟同士で幼馴染みだしね。」
「い、従兄弟ぉ?」
そう。俺達は生まれたときからと言っていいくらい、ずっと一緒だった。
そのためもあってか、恭弥はああいう性格だが俺に対しては気を許してくれているようだ。
「おめーファミリーに入らねえか?」
とリボーン。
「んなっ、お前誰にでもそういうこと言うなよ!!」
と綱吉くん。
マジでか。こんなにすぐ誘われるとは思わなかった。
ここはとりあえず、とぼけとこう。
「ファミリー?何それ。」
「マフィアだぞ。ツナが10代目ボスだ。」
「ちょっ、俺はボスにはならないって!じゃなくて、すいません!ヒバリさん、嘘ですから!!」
綱吉くんは必死に言いながらリボーンの口を塞ごうとするが、
「俺に触れるな。」
リボーンが綱吉くんの腕を捻る。
「痛っ!ギブギブっ!」
さて、どう返事したものか。
というか、仮に俺が入ったらポジション的にはどうなるんだろう?
守護者じゃないならそんなに大変ではないかな?
まぁ、入らないけど。
よし、山本くん風に。
「マフィアごっこ?銀さん忙しいからまた今度ね。」
とりあえず、今日のところはそう言って立ち去ることにして、俺はその場を離れた。