13年後。
オレはまた笑っていた。
せり。
刹那。
オレはまだ笑えている。
時間は…残酷に動いても、
幸せな記憶はそのままで。
いいかな、もう少し。
人間らしく、笑っていてもいいかな。
「次は、10日後に来るからね〜」
せりが手を振り"約束の地(カナン)"を去る。
行くなと引き止められずにいるオレは、
「もう来るなよ、せり。静かにいさせてくれよ」
心にもないことを言って。
「芹霞、久遠がああいうんだ、もう来るのは…」
「やだ。絶対来る」
その返答を聞いて、俺は紫堂櫂に勝ち誇った目をくれてやる。
例え紫堂櫂がせりを連れ帰るのが役目だとしても、せりが望む限り、紫堂櫂はただの付き人だ。
そう、今はまだ。
「蓮、10日後には"あれ"は手元に来るんだろう?」
こっそり聞けば。
「はい。アレス=イオアの店舗に連絡とりました。試着して欲しいようです。どうなされますか、こちらに呼びますか?」
「いや、見廻りがてらそっちに行くと伝えろ」
「御意。それから"あれ"の試作品が出来たようです。丁度、司狼が旭を肩車して丁度の大きさだそうです。パレードの電飾もOKです」
「よし」
せり。
君がオレに会いに来てくれるように、オレは力を尽くす。
13年前、君の記憶すら追い返したオレなれば、今度こそは君と繋がりたい。
"約束の地(カナン)"から出られぬこの身が口惜しいよ。
出られたら、オレは君から離れないだろう。
願いはただ1つ。
"約束の地(カナン)"から出て、君と一緒に居たい。
だけど、許されぬこれこそがオレに課された罰。
もどかしい距離にオレは煩悶しながら、例え報われなくても、君の笑顔を見たくて、駄々のような無駄な足掻きをする。
13年前君を怖がらせたオレだから――
だから今こそ…。
少しでも、オレが出来る幸せを君に。
"好き"の言葉の代わりにどうか。
君の笑顔を、集めたいオレから感じて欲しい。
どうか、オレの愛を――…。
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