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「ねえ、皆で写真とろうか」
せりが携帯電話というものを取出した。
今は電話で写真が取れる時代になったらしい。
カメラというものはなくなってしまったんだろうか。
「久遠、写真なんて知ってるの? 撮ったことあったの?」
「せり。君はオレを何だと思っているんだ」
「え? 世間知らずのお坊ちゃま?」
「君に言われると、腹が立つな」
せりは覚えていないのか。
13年前、オレと写真とっただろう?
知らず、夕食に…君のお腹に入った"ぴょこたん"と一緒に。
――このウサちゃんのふさふさ、好き〜。
ふさふさ、ふさふさ…煩かったせり。
レグがシャッターを押す瞬間、オレはせりの腕にある…食用飼育されていた"ぴょこたん"の耳を、せりの鼻に近づけて小刻みに動かした。
――ぶへっくしょん。
カシャッ。
洟垂(はなた)れせり。
爆笑するオレと刹那。
それが13年前に、せりと撮った1度きりの写真。
それすら今は、燃えてなくなってしまった。
だけどあれを思い出す度、オレは思う。
オレは確かに笑っていたのだと。
ロクでもない過去を持ち穢れた身体を持つオレにも、笑っていた時期もあったんだ。
刹那と一緒に。
「ほらほら、皆集まって? シャッターは自動でくるからね〜。ほら久遠も、協調性出して。久遠、久遠!! 写真取るのッッ!!」
せりを真ん中に、携帯電話の前に皆が集まる。
せりの横に陣取ろうとするのは紫堂櫂だ。
俺はせりに手をひかれていたから反対隣。
「隣は、俺の定位置だ」
せりの後ろからオレを睨み付けてくる紫堂櫂。
「そんなことに拘るなんて女々しいな、お前。写真の位置を気にするのなら、現実の立ち位置を気にしろよ。
一生"無縁"だぞ、お前」
ぎりと歯軋りの音。
「ああ、ちなみに。俺は無縁じゃないから。ああそうだな、お前以外皆そうだ、せりに宣言されていないから。お前以外皆、"それもアリ"」
「…久遠」
「何」
「外に出ろ」
「上等だ」
「喧嘩はやめてよ、写真・・・」
俺は――…
「長い耳がないから、これで」
かぷりとせりの耳を噛んだら。
「「「「久遠〜!!!!」」」」
「はははははは」
カシャッ。
オレ1人笑い転げて、それ以外の男達がオレを見て怒るその写真。
「「「消せ消せ消せ〜!!!」」」
おかしくてたまらなかった。
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