「頂戴」
目の前に出された手。
「え? でも…」
玲くんの顔は凄く嬉しそうで。
「僕の為に僕を想って作ってくれたのなら、凄く欲しい。凄く嬉しい」
「え、だけど…嫌なんでしょう?」
すると玲くんはぶんぶんと頭を横に振って。
「芹霞のクッキーが嫌なんじゃなくて…"お返し"が嫌だったんだ」
「え?」
「義務でその他諸々の1つにされたのかと思ったから」
義務…?
「君が愛を込めてくれたのなら。
それが岩だろうと何だろうと…僕は食べたいよ」
そう言うと、玲くんはクッキーを目の前でぽりぽり食べ始めて。
「美味しいね。僕好みだよ?」
本当に嬉しそうに食べてくれて。
此処まで美味しいクッキーだろうか。
空になったはずのクッキーの欠片。
口にしてみると…
「うわ…酒入れすぎ…」
「大丈夫。何だかほわほわして気分がいい。有難うね、芹霞」
ちゅっ。
ほっぺにちゅうが来た。
ほんのりと赤い玲くんの顔。
お酒のせいなのかな。
それとも照れているのかな。
「やっぱり…判るものだよね、食べれば。作ってくれている人の愛情の度合いが。僕、もっともっと愛情込めなきゃ…」
何か言っているけれど。
「それでも、今は。この美味しさで我慢してあげる」
ちゅっ。
またほっぺに飛んでくるちゅう。
「れ、玲くん!!!?」
「ん?」
何で嬉しそうなんだろう。
あたしよりも凄く美味しいのを何でも作れるくせに。
こんなにいびつで酒臭い…味見してきたはずなのに、あんまり美味しくないの。
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