そして出てきた『Aホール』。
観音開きをばんと両手であけて、
「玲くん、遅くなってごめんなさい!!!」
しかし…
「あれ? ホールの中に、またドア? 小屋?」
判らないけれど、
『芹霞の家』
そう表札がついているから、首を傾げながらドアを開けた。
途端、
「芹霞、心配したよ!!!」
玲くんがあたしに抱きついて。
何処から出てきた、玲くん。
「ごめんなさい、先生に捕まっちゃって…」
「それならいいけれど…」
玲くんは心配性だ。
しかし何だろう、この眩い部屋。
家具はテーブルと椅子だけだけれど…飾られている小物が凄く可愛い。
色とりどりでやけにファンシーポップ調。
テーブルの上にはお皿に載ったケーキ!!!
ケーキ!!!
ケーキ!!!
しかも!!!
あれは!!!
椅子に座って、ケーキを食べようとしているあれは!!!!
「ててててててて」
あたしは叫ぶ。
「ティアラ姫!!!?」
喜悦に戦慄。
漂う甘い匂い。
空腹に直撃。
ぐ〜。
いかん。
それよりホワイトデー!!!
ティアラ姫よりケーキより!!!
凄く気になって仕方がないけれど。
玲くんにホワイトデー!!!
あたしは、鞄からクッキーを取り出して。
「玲くん…クッキー作ったの。
下手糞だけれど…
ホワイトデーだから…」
すると何故か玲くんは悲しげな顔をして。
「お返し…?」
「うん…」
「そうか…」
何だか項垂れ気味…。
何だか消沈気味…。
「玲くん…嫌だった?
玲くんなら"白い王子様"だから、ホワイトチョコにしにしてホワイトキュラソー少し混ぜたんだけれど…。凄く…玲くんを思って考えたんだけれど」
あたしも一緒に落ち込んでしまった。
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