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一番上にあるのは、ふさふさ…葉つきの大きな大根。
これが50円なんて安いよね。
嬉しいね。
瑞々しい僕の大根。
今日の夜は、何の大根料理にしようかな。
芹霞も呼んじゃおうかな。
喜ぶかな。
ホワイトデーはもっと喜んで貰いたいな…。
そう思って顔を綻(ほころ)ばせた僕は、騒がしい音楽に足を止めた。
ゲームセンターだった。
僕の足が止まったのは、視界の端に映った…インパクトの大きい顔で。
店内にある大きなクレーンゲームの景品だった。
芹霞の大好きなキャラの…
特大ぬいぐるみが飾ってある。
「うっわ…」
パグ…のような潰れた顔。
ふて腐れているのか睨んでいるのか判らない、星冠(ティアラ)を頭に被った、ぶちゃいくプリンセス。
「ティアラ姫…」
何であんなものが特大になって、
さらにゲームの景品になるのか判らない。
あんなので集客出来ると思った、企画者の気持ちが判らない。
だけど――
「あれ…喜びそうだな、芹霞」
世界にただ1人、例外中の例外であったとしても…芹霞が喜んでくれるものなら。
そう思ったら、僕はそのクレーンゲームに赴いていて。
絶対空いているだろうと思っていたら、其処には既に先客カップルがいた。
「タカシ〜、あれ絶対取って!!! 可愛いの、アタシ大好きなの!!!」
へえ…。
"可愛い"と表現できる強者、居たんだ?
それは芹霞とは対照的な、派手なメイクをした女子高生。
タイプが違うのに、それでも愛されるティアラ姫って、実は凄いプリンセスなのかもしれない。
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