君と2人だけの部屋の中。
その時の君はとても小さくて。
それでも芽生えていた恋心。
触れてみたかったのは、僕が決してロリコン趣味だったからではなく。
芹霞が好きだったから。
それでも君には櫂が居る。
それ故に心を押し殺していたあの頃。
葛藤を隠すように笑うしか僕には出来なくて。
――具合悪い時は、ぎゅうとしてたら…早く治るよ?
そんな僕の心露知らず、君はとびきりの笑顔で、両手を広げて僕を抱きしめた。
君に包まれる温もりに、僕は充実感を感じて、半分陶酔してしまって。
――風邪が移っちゃうね。
――玲くんが元気になるのなら、あたしに全部移して?
まだ小学生が無邪気な笑みで、とんでもない…小悪魔の口説き文句までくれて。
それ以降の僕の葛藤は半端じゃなかったけれど。
僕はね、嬉しかったんだ。
僕を見ていてくれる人がいること。
僕の為に一生懸命になってくれる人がいること。
僕は…一人じゃないんだ。
紫堂の時とは、違うんだって。
それ以来、僕の中では大根が愛の象徴になってしまった。
大根だけれど。
白くて太い大根だけれど。
大根が愛しくて仕方がなく。
大根を家から切らすことはなかった。
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