******芹霞Side
「んんと、じゃあ紅茶の茶葉用意して貰える? 櫂はニルギリ、煌はオレンジペコ。あたしは…アップル、桜ちゃんは何にする?」
「櫂様と同じで」
「それに、アールグレイをティースプーン一杯ずつ混ぜてね。これは玲くんに教わったんだけれど、中々に…ああ、玲くんも呼びたいな」
玲くんだって家でお仕事頑張っているんだから、1人除け者にはしたくない。
「玲くん? 桜ちゃんの修行が中止になって、何か皆がケーキ持ってうちに寄るみたいだから、玲くんも来ない? え? もう家出てる? 何だ、櫂から連絡あったんだ。玲くんは紅茶は何がいい? あたしと同じ? じゃあアップルね。それじゃ気をつけてね」
さすがは櫂。そのつもりだったらしい。
桜ちゃんは気が利く子だから、ひと言で10くらい察することが出来る。
あたしが電話をしている間に、玲くんの分の茶葉を用意して、全員分のティーカップを温め始めた。
玲くんもそうだけれど、本当にいいお嫁さんになれそう。
「櫂様は…家では珈琲ばかりなのに、芹霞さんが作る紅茶は飲みますよね。何ででしょうね?」
突然桜ちゃんがそう言った。
「え? あ、そうだね。あたしが選んだ茶葉が気に入ったのかな?」
「愚問…でしたね。芹霞さんが自分の為に選んでくれたものを…櫂様が拒否するはずありませんものね」
それは何だか哀しそうで。
「桜ちゃん、どうした? 桜ちゃんも、欲しい茶葉あったら言ってね、あたし頑張っておいしいの選んでくるから」
いつもいつも桜ちゃんは。
"櫂様と同じ"
そればかりで。
自己主張が烈しい部分もあるくせに、皆の前では櫂と同じにしたがる。
それも自己主張といえばそうかも知れないけれど、何だかそれは寂しい主張だ。
- 4/8-
[ *前 ] | [ 次# ]
ページ:
【しおりを挟む】
←SS TOP