入った建物は"ゲームセンター"で。
「初めての"デート"がゲーセンとは、ムードもないけれど。だけど櫂だって、ムードある処を中心として捜索しているはずだから、だったら意外に穴場かもね」
おでかけにムードっていうもん、必要なんだ。
初心者にはイロイロ未知なる世界。
そんな時、喧騒のゲーセンで、一際大きな歓声が上がっていて。
どうやら新作の格闘ゲームの、大会中だったらしい。
少しそわそわしている玲くんを感じて、
「行ってみよ?」
すると玲くんは喜んだ。
大会用ゲーム機は10台あり、全国のゲーセンと繋がっているらしい。
一際大きなモニターには、上位者の闘いがリプレイされ、順位表が時々流れる。
挑戦者の後ろには、ぐるりと観客が取り囲んで見守っていて、かなり混雑していた。
その中で、立ち見用の長椅子にあたしを導こうとした玲くんだったけど、誰かの肩にぶつかってしまって。
「いてえな、このブス!!!」
そう言った途端、男は悲鳴を上げた。
「もう一度言ってご覧? 僕の"彼女"が何だって?」
凄い!!
あたし初めて"彼氏"に守られたよ!!!
そんな感激の間も、男の顔は青ざめていって。
玲くん、腕を捻り上げているから。
「格闘ゲームも出来ねえオカマとブスは、いちゃついてないで早く何処か行け!!!」
玲くんの顔が"えげつなく"変わってきた。
「れ、玲「出来ない…ね? ふうん。じゃそこで見てみれば?」
玲くんは特にその男に何するでもなく、あたしを連れて挑戦者台に歩いて行き…
「ちょっとごめんね?」
対戦中の1人の男に色気満載で微笑んで固まらせると、ぽいと外に投げ捨てて。
椅子に座って大根を膝に置き、コントローラーに触れた。
順番待ちしていた男達からブーイングの嵐だったけれど、
「格好つけただけでどうせすぐ終わるんだから、笑ってやろうぜ、あの大根オカマをよ!?」
あの男の野次が飛んできて、周囲は嘲笑に溢れかえった。
そんな空気にただ平然としているのは玲くんだけで。
パネルの簡単な説明に目を通してから、
「実機は久々だし、やったことのない格ゲーだけど…何とかなるか」
そして数分後。
「すげえ、あんな技あったか!!?」
「全部瞬殺!!?」
「やべえって、あいつ強すぎ…ああ、全国1位に勝っちまった!!?」
無敵の玲くんは意気揚々と、あたしにブスと言った男に振り返り、
「どう?」
それはどや顔で。
男はこそこそとして俯いた。
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